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2006年7月

2006年7月24日 (月)

刑事事件の書き込み

 前回の書き込みが大作だったためか、閲覧数が増加して初めて2日間で1000を越えました。いままでも書き込むと500を越えることはありましたが、次の日は減少するので、2日間で900を越えることはありませんでした。

 今までで閲覧が多かったのは、保釈金のことを書いた時でした。刑事事件に関連した書き込みのほうが多くの方に読まれている気がします。「東京女子医大幹部不正事件」については、進行しだいまた書き込みしますが、 刑事事件に関しては山のようにテーマを持っていますので、今後は刑事関係の話を多くしようと思います。

「事件報道」「逮捕前の任意取り調べ」「取り調べにおける注意点」「民事くずれと遺族」「マスコミの張り込み」「警察の盗聴および盗メール」「逮捕劇とその報道」「任意同行と逮捕状」「警察と検察の手錠のかけ方の違い」「マスコミの集結」「腰縄」「取り調べ室」「警察調書と検察調書の違い」「留置場」「代用監獄」「牢屋と地震」「牢屋内の人間学」「牢屋内部屋長」「行政警察員と司法警察員」「指紋の登録と写真撮影」「接見禁止」「面会」「牢屋内の文房具と新聞」「留置場での診療」「右翼と俳優とジャズダンスの練習」「各国勾留者の獄中生活と佐藤医療相談室」「勾留者のフラッシュバック」「運動時間とは名ばかりの喫煙タイム」「5日に一回の入れ墨品評会」「臭い飯とは」「兵糧責め」「護送車と脳梗塞患者の発症と佐藤の診療」「お役所仕事の裁判官」「龍のネクタイの取り調べ検察官」「牛込留置所図書館」・・・・

と起訴される前だけでも書くことは山のようです。拘置所にいくとまた沢山テーマが出てきます。早めにこのことを知りたいというリクエストがありましたらコメントください。

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2006年7月21日 (金)

あかの他人の犯罪の証拠隠滅などありえない

1.二つの判決

1-1業務上過失致死の無罪と証拠隠滅の有罪

 東京女子医大の事件では、私は業務上過失致死の疑いで逮捕、起訴されましたが、2005年11月30日の判決は無罪。しかし、担当S講師は、証拠隠滅罪で逮捕、起訴され、2004年3月22日に有罪となりました。起訴されたのは、「他人の刑事事件の証拠を隠した」、すなわち、自分以外(=佐藤)の証拠を隠滅したということです。この二つの判決からは、矛盾を感じる人も多いでしょう。

 実際、遺族も疑問を持っています。「無罪判決後の、遺族の記者会見では、『無罪というなら執刀医(S講師)は何を隠したかのか。隠滅のもとになった医師が無罪になるのは納得できない。』と語った。」(東京新聞 2005年12月1日 朝刊26面)

 この「何を隠した。」の質問にお答えするのか今回のブログです。答えは簡単です。S講師は「『明香ちゃんの心臓手術中、脱血不良から脳浮腫をひきおこした責任追及に恐怖心が湧いてき〔て〕』、『自分の刑事責任を問われ大学をクビになる』ことを恐れ、『全て自分が刑事責任から逃れようとして』、『自分の保身のために』自分の刑事責任の証拠を隠したのです。(『』内は刑事裁判で証拠とされた調書より抜粋。)

1-2 証拠隠滅する者とされる者の関係

 「証拠隠滅する者とされる者の間が親族関係などの絆で結ばれている場合には、不合理なこと、違法なことを敢えて行うということもありうるであろうが、S講師と佐藤の間にそのような関係はない。また、S講師が技士や看護師に改竄を命じたように、職制の上位者が下位者に違法な行為を命ずるということは想定可能であるが、助教授が不在の医局の筆頭講師(最高齢の講師)のSが助手の佐藤のために違法な行為をするという理由があるはずはないのである。」(最後のパラグラフは裁判の弁論要旨に佐藤が単語レベルで加筆)

2.弁論主義と分離公判

2-1弁論主義

 「裁判所は真実を追究して、判決を下す。」とお考えの方もいると思いますが、それは誤りです。刑事裁判は「真実は何か。」を争う場ではありません。「刑事裁判の最終的な判断は、検察官が起訴状に記載した事実が合理的な疑いを容れる余地のない証明をなしえたかどうか。」です。(法律用語に慣れていない人には少し難しい用語が並びはじめますが、ちょっと我慢して読んでください。後ほどかみ砕いて書きます。)「起訴状に書かれている事実が、真実であろうがなかろうが、事実であると証明できればよい。」のです。

 検察官が起訴状の公訴事実に記載した内容、例えば、「佐藤が業務行過失罪に問われることを恐れてS講師は証拠隠滅をした。」ということが真実でなくても、S講師が事実認定を争わなければその部分については、裁判上は真実とされるのです。 これシステムは、「弁論主義」と呼ばれます。

2-2分離公判

 S講師の弁護団は、第一回公判で、公訴事実を全面的に認め「証拠隠滅罪」を争わない姿勢でした。反対に私は、「業務上過失致死罪」の疑いに対して真っ向から争う、全面対決となりました。 一応、「刑事裁判では、真実を解明することが目指される。」のが基本ですが、そうなると、S講師の判決は、私の判決が出た後になってしまう。私が無罪となると、S講師の責任が問題になる可能性もでてきます。

 S講師の弁護団がそのように考えたかどうかは分かりませんが、結局は、裁判の途中で「業務上過失致死罪」と「証拠隠滅罪」の分離裁判を希望しました。(裁判は、当初は、二人の被告人が同時に出頭して公判が行われていました。)

 弁論主義においての、「当事者双方に争いのない事実(佐藤が業務上過失罪に問われる可能性があると思い、隠滅したこと)については証拠調べをおこなわず、それを裁判の基礎とさせたのです。

 簡単にいえば、S講師は業務上致死の罪には問われていないので、起訴状のまま裁判が進行すればS 講師の裁判においては、その罪は、一見佐藤にあるという方向に向かう印象が生じます。実際、S講師の判決では、佐藤の罪を裁判所が認めているとしか理解できない報道をした新聞社が幾つかありました。(ある全国紙と東北のK新聞、関東のJ新聞、中国地方のC新聞。)

弁論主義の補足(抽象的なので、法律にあまり興味がない人は飛ばし読みしてください。)

 一応、「刑事裁判では、真実を解明することが目指される。」のが基本ですが、当事者双方に争いのない事実については証拠調べをおこなわず、それを裁判の基礎としなければならないのです。つまり、刑事訴訟の弁論主義とは、検察官と被告人の主張・立証に拘束され、その範囲内においてのみ判決することが許される訴訟の構造をいいます。しかし、刑事訴訟法は、実体的真実発見の立場から、民事訴訟のようにはこの主義に徹底していません。

3.一転無罪主張

3-1刑事事件と民事事件の証拠

 「弁論主義」「分離裁判」を利用して進行してきたS講師の裁判ですが、最終弁論では一転無罪主張となりました。

「東京女子医大病院での手術ミスによる女児死亡事件で、看護記録などを改ざんしたとして証拠隠滅の罪に問われた元担当医S被告(47)の公判が2003年9月4日、東京地裁であり、2002年9月の初公判で起訴事実を認めた弁護側が、冒頭陳述で一転して無罪を主張した。弁護側は「カルテを書き換えたことは事実で、心の底から反省している」としたが、「(証拠隠滅罪の要件である)他人の刑事事件の証拠を隠すという認識はなかった。カルテ不実記載罪のようなものがない以上、無罪と言わざるを得ない」と述べた。

 この報道だけでは、「他人の刑事事件の証拠を隠すという認識はなかった。」とは主張しているものの、よく分かりません。実際の弁論では、「他人(佐藤)の民事事件の証拠を隠そうとした。」ということでしたが、裁判の最後の最後になってそんなむちゃくちゃな主張が通るはずありません。

3-2主任教授との関係

 また、S講師は、「証拠隠滅は元主任教授のI氏の指示だった」と主張していましたが、真実は違います。主任教授は当日は自分の手術があり、その後は、教授退官記念講義の準備に忙しくそんな指示はしていませんでした。判決の「S講師が、主任教授の指示を盾に取って看護師らに改ざんを命じた形跡はうかがわれず、事前の共謀は認められない」と判断したのはあたり前のことです。

4. 本件裁判における被告人などの供述の取り扱い-被告人の言い分より客観的証拠による無罪の証明

4-1 事故原因の認識

 事故が発生した直後、患者さんがICUに入室する前の心臓外科医と臨床工学士の調査検討では、脱血不良の原因は「一回限りの使い捨て使用すべきフィルターを一週間再利用し、それが閉塞した」ということで全員が納得しました。フィルターの使用は、退職した元技士長がそのような慣習としていたので、誰に責任があるというような話にはなりませんでした。自分に責任があると感じていたであろう(*)S講師としては、当時の技士長が悪いとすると話が簡単なので、そういった行動をとっていました。

 ところが、人工心肺を一回も使用したこともなく、専門家でない女子医大幹部が作成した「内部報告書」は、高校理科で学ぶ内容も理解していないような論理といい加減な実況検分によって、あたかも佐藤が「吸引ポンプの回転数を上昇させたことが死因」というような内容。

      

*心臓外科の多少の知識がある人のみ分かることですが、脳障害の原因または促進因子は、脱血不良発生時に脱血管の両方をクランプして上大静脈をパーシャルバイパスにしなかったことです。

4-2 AでなければB, BでなければA(弁論要旨 第1序より)

 「本件は、手術室の中で生じた事故であり、これが犯罪になるかが問われている。ところで、手術室の中は、術野と人工心肺側の2つの部門に分かれ、後者はさらに人工心肺担当医と技士に別れる

 本件ではそもそも刑事事件となるか、すなわち術野と人工心肺側のいずれかに過失が存するかどうかが問題となる。「患者が死亡したから、誰かが責任を取らなければいけない」という論理は成り立たない。

 しかし、強制捜査が行われ、起訴までされたということになると、「誰にも責任はない(かもしれない)」という懐疑は存在を許されず、「誰かが悪いはずだ」「悪いのは誰だ?」という糾問が始まる。

 そして、手術室という限られた場所での出来事であれば、「犯人」になりうる人は限られる。術野か人工心肺側かのいずれかである(本件では、麻酔医と看護婦は除外される)。

 そうすると、「人工心肺側に責任があれば術野には責任がなく、逆に人工心肺側に責任がなければ術野に責任がある」とか、「仮に人工心肺側に責任があるとしても、担当医に責任があれば技士に責任はなく、技士に責任があれば担当医に責任はない」といった思い込みが蔓延することになる。

 したがって、術野の医師の証言の信用性を判断するにあたっては、人工心肺側に責任があるとされれば自らの責任を免れるという観点から証言が歪められていないかを検討する必要がある。技士についても同様である。

 このため、本件の事実認定にあたっては、基本的に、手術の過程で作成されていた原始記録に依拠すべきである。さらに、供述については、まず、看護婦のような利害関係を持たない医療関係者の供述を重視すべきである。これに次ぐのは、本来は麻酔医であるが、研修医であった担当麻酔科医については麻酔医として十分に義務を果たしていたかについては疑問も残るので、その供述をそのまま真実と認めることはできない。

 術野側にいた医師については、上記のとおり、「人工心肺か術野か」という関係が存するから、被告人と同等の立場に置かれているものとして、その信用性を判断すべきである。したがって、個々の証言の真実性を考えるにあたっては、原始記録等の客観的記録、医学的常識との関係を常に念頭に置き、その上で、相互の供述の矛盾、本人の供述の変遷などがないかを検討したうえで、真偽を判断すべきである。

5.S講師のカルテ改ざんの供述の変遷

 私の判決前の最終弁論における弁論要旨は、10章からなり、資料1として学術論文の解説、資料2として裁判所のおこなった検証実験のまとめをいれると307頁からなります。第5章「検察官が依拠する証言者の信用性」は、3項目からなり、その2は「S講師」でその中にもさらに3項目がありその「(3)カルテを改ざんした理由」に加筆しました。 

5-1           供述の変遷のアウトライン(佐藤解説)

 逮捕歴がない一般の人は知らないと思いますが、逮捕から起訴までの間には、警察官の取り調べと検察官の取り調べは、交互になったりしながら、別々に調書が作成されます。警察と検察の連絡がうまくいっていないと、供述の整合性がなく齟齬が生じます。このことは、逮捕後被告人は、強制捜査により警察や検察のいいなりの供述調書に署名したことの証拠になります

1.       逮捕前の任意出頭初期―「事故の責任は佐藤にある」という段階

2.       S講師が担当弁護士を一時解任したと思われる時期-「カルテの改ざんは、自己保身のため」という段階

3.       逮捕の次の日 警察員最初の取り調べ6月29日-「カルテの改ざんは技士長を守るため」という段階

4.       逮捕の次の次の日 検察官最初の取り調べ後6月30日-「カルテの改ざんは佐藤を守るため」という段階

5.       検察の方針変更後 7月13日-「カルテの改ざんは人事上の不利益を蒙らないため」という段階

6.       爆笑 7月14日-検察官の事件の見立てについていけない警察官

5-2 供述変遷の詳細(弁論要旨 第5章 2.S講師 に加筆)

(3)カルテを改ざんした理由

  カルテを改ざんした理由についてS講師は種々述べているが、その内容は著しい変遷を重ねている。以下、本件事故について責任を負うのは誰かという論点にも触れながら、カルテを改ざんした理由についてのS講師の供述を検討する。

ア 逮捕前の任意出頭初期「事故の責任は佐藤にある」という段階

  S講師は、乙第16号証(2002年2月26日付け警察官調書)では、佐藤からフィルターが詰まっていたという話を聞いたが、その後、Sh医師と佐藤の話を聞いていると、佐藤が陰圧吸引補助脱血法を使っていたことがわかったとした上で、

    「短気な性格の自分でも、この話を聞いて怒る気もなくなり先ほどの佐藤一樹医師の報告(一週間使用したフィルターが閉塞したこと)は、自分を正当化するためのもので、責任を技士長にさせるつもりであることがわかった

のです」(乙16・19頁)

   と述べている。

    すなわち、この段階では、「事故の原因は、佐藤が無断で陰圧吸引補助脱血法に変更したことにあり、事故の責任は佐藤にあると思っていた」としていたのである。(佐藤追加 ちなみに、陰圧吸引補助脱血法に変更すると判断するのは人工心肺担当医が行い、それを術野に報告した。勿論、使用されていた回路は、ルーチーンの者で、落差脱血法と吸引脱血法との切り替えを行える前提は医局員全員の認識)

イ S講師が担当弁護士を一時解任したと思われる時期「カルテの改ざんは、自己保身のため」という段階

  ところが、上記の供述から10日程しか経っていない甲第132号証において、S講師は

       この頃から明香ちゃんの治療に自信がなくなりかけてきて

明香ちゃんの心臓手術中、脱血不良から脳浮腫をひきおこした責任追及に恐怖心が湧いてきた

のです。

・・・チームリーダーとしての責任追及が一番怖かった

のです。

術野側の自分は、手術中自分の技術力を全部出しきって手術に望みました。しかし手術の失敗は、チームリーダーの責任にされてしまうのです。

・・・東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所小児外科に入局してから20年間小児外科で頑張ってきました。・・・

それがこの手術の失敗で崩れ去ってしまうのです。大学を首になり明香ちゃんの手術の失敗による医療過誤事件の犯人になる虞があったのです。

  医師としてのモラルを問われるかもしれませんが、このころから、自分自身の保身のため・・・ICU記録録に記載しないでよいとの指示を出し始めたのです。・・・看護婦に脳浮腫の軽減を図るグリセオール、マニトンの薬品を記載しないでよいといった理由は、

術中のトラブルを最後まで隠したかった

からです」(甲132・6~8頁。下線弁護人)

   と述べるようになった。

    すなわち、ここでは、S講師がカルテの改ざんをしたのは、自分自身に対する責任を追及され、医療過誤事件の犯人にされてしまう虞があったからであるとされている。

    この「カルテ改ざんは自己保身のため」という供述は、その後も任意捜査の段階を通じて一貫している。たとえば、甲第133号証(2002年4月23日付け警察官調書)では、

自分の保身のためにしたカルテ等の改ざん」(甲133・1頁。下線弁護人)

「チームリーダーという責任名目で解雇されたあげく業務上過失致死罪の犯人となり大学病院の医師としての使命を終えてしまうのです。・・・

情けないことですが、この様な状況から、

もしも明香ちゃんが死んだら自分の刑事責任を問われ大学をクビになる

という変な考えの恐怖心ばかりが湧いてきたのです。・・・

   一人の医師として自分のやったことは、言語道断の許されぬものです。全て自分が刑事責任から逃れようとしてやったことですから全部正直に話します」(甲133・2頁。下線弁護人)

 自分が刑事責任を免れるためにしたことは・・・

          ICU看護婦に〔脳浮腫改善の薬品投与を〕記載しなくともいいと命じた理由は人工心肺装置の脱血不良状態が続いた結果、脳浮腫になった事を最後まで隠し通したかったからです」(甲133・3頁。下線弁護人)

   とされている。

ウ 逮捕の次の日 警察員最初の取り調べ「カルテの改ざんは技士長を守るため」という段階

    ところが、上のように、「自己保身のためのカルテ改ざん」という理由は、強制捜査に入ると一変する。まず最初に出てくるのは、技士長を守るためという理由づけである。

    甲第134号証(2002年6月29日付け警察官調書)で、

「当時は臨床工学技士がフィルターを交換せず、そのまま人工心肺装置で使用したためフィルターが詰まり脱血不良になったことが原因で技士長が刑事責任を問われると思いICU記録等を改ざんしましたが、結果的には佐藤一樹医師の人工心肺操作ミスを隠し通すことになってしまいました」(甲134・1頁。下線弁護人)

     とされているのが、これである。

    エ 逮捕の次の次の日 検察官最初の取り調べ「カルテの改ざんは佐藤を守るため」という段階

      しかし、佐藤が業務上過失致死の被疑事実で逮捕され、S講師がその証拠隠滅の被疑事実で逮捕されているのに、S講師のカルテ改ざんの目的が臨床工学技士長を守ることというのでは事件が成立しない。

      このためであろうか、甲第134号証の翌日に作成された甲第139号証(2002年6月30日付け検察官調書)では、一転して、佐藤を守るためにやりましたということになる。ここでは、

         「その脳障害の原因の1つを作った佐藤一樹先生の刑事責任を含む責任追及を免れさせてやろうと思い・・・改ざんをさせたり、私自ら改ざんをしたりし・・・改ざんをした新しい人工心肺記録を作成させたのでした」(甲139・2頁。下線弁護人) 

     とされるに至った。

      ところで、このように検察官調書は、「佐藤=本犯、S講師=佐藤を助けるためのカルテ改ざん」という図式になっているが、警察官調書は「技士長=本犯、S講師=技士長を助けるためのカルテ改ざん」となっているので、このままでは矛盾が生じる。そのため、甲第139号証が作成されてから3日後、今度は警察官調書が180度変更される。甲第135号証(2002年7月3日付け警察官調書)の、

          「前回取調べ時、明香ちゃんの死亡原因は、

当時臨床工学技士がフィルターを交換せず、そのまま人工心肺装置で使用したためフィルターが詰まり脱血不良になったことが原因で臨床工学技士が刑事責任を問われると思いICU記録等を改ざんしましたが、結果的には佐藤一樹医師の人工心肺操作ミスを隠し通すことになってしまいました

と話しましたが真実は、最初から人工心肺を操作した佐藤一樹を救うためICU看護記録の瞳孔数値や脳浮腫を軽減するための薬品を明香ちゃんに投与したにも関わらず、これをICU看護記録に記載しないように命じたり、瞳孔数値を書き直させたり自分で書き直したり、人工心肺記録紙を臨床工学士に新たな記録紙に書き直させて偽造させました。

           これが真実です。逮捕されたショックで頭が混乱していたため刑事さんに臨床工学技士を助けるためにしたと話してしまいました。最初から佐藤一樹医師を助けるためにしたことです」(甲135・1~2頁。下線弁護人)

     というのが、そのための取り繕い供述である。

   オ 検察の方針変更後「カルテの改ざんは人事上の利益を蒙らないため」という段階

     このように、カルテを改ざんした理由は、「自分の保身」→「技士長を守る」→「佐藤を守る」と変遷を重ねてきた。この最後の理由は、佐藤が業務上過失致死事件であるという検察官の構図と符合する。このためか、その後しばらくは、カルテ改ざんの理由について調書では触れられなくなった。

     しかし、よく考えてみると、佐藤を守るためにカルテを改ざんしたというのは、不自然な理由である。S講師も認めているように、カルテの改ざんは、医師として「言語道断の許されぬもの」である。そのようなことを、自分のミスを隠そうとして行ったというのであれば、許されるかどうかということとは別に、一応、了解可能な範囲である。しかし、第三者である佐藤の責任を免れさせるためにそのような許されぬことに手を染めるというのは、普通は考えられない。証拠隠滅する者とされる者の間が親族関係などの絆で結ばれている場合には、不合理なこと、違法なことを敢えて行うということもありうるであろうが、S講師と佐藤の間にそのような関係はない。また、S講師が技士や看護師に命じたように、職制の上位者が下位者に違法な行為を命ずるということは想定可能であるが、講師のSが助手の佐藤のために違法な行為をするという理由はない。

そうすると、最初の段階の「自分の保身」という理由が正しい方向であるということになる。しかし、警察官調書のように、「全て自分が刑事責任から逃れようとしてやったことです」というのでは、佐藤の刑事責任がなくなってしまう可能性がある。医師2人の逮捕に踏み切った検察当局にそれはできない。

     そこで生まれたのが、「カルテを改ざんしたのは、人事上の不利益を蒙らないようにするためでした」という新たな理由づけである。乙第21号証(2002年7月13日付け検察官調書)では、この点について、

        「医療過誤が発生した場合、それが患者の家族に発覚して、家族から民事裁判を提訴され、その民事裁判の過程で医療過誤が明らかになったりすれば、チームリーダー自身には手術中にミスがなく、チームリーダー以外の者の手術中のミスで医療過誤が発生した場合でも、東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所・・・の小児外科では、チームリーダー以外の者の責任は余り問題にならず、チームリーダーが小児外科内から責めを負わされ、東京女子医科大学付属病院以外の病院に飛ばされて左遷させられるなどの人事上の不利益な扱いをされる風潮がありました」(乙21・6頁)

「私は、そのようにチームリーダーであった私が心研外科内から責めを負わされ、人事上の不利益を受けることがないようにしようと思い、その民事裁判や刑事告訴後の警察の捜査で手術中の脱血不良により平栁明香さんに重篤な脳障害を負わせたという医療過誤が明らかにならないようにするため、その民事裁判や刑事告訴後の警察の捜査で証拠になるであろうICU記録に平栁明香さんに脳障害が発生していた事実が明らかになるような記載は残さないようにしようと思いました」(乙21・9頁。下線弁護人)

    と説明されている。

こうして、カルテ改ざんの理由は、最終的に、「人事上の不利益を蒙らないようにするため」ということになった。

もっとも、乙第21号証の翌日の警察官調書(甲136・2002年7月14日付け)では、「明香ちゃんが死亡後人工心肺担当医の佐藤一樹医師をかばうためにICU看護記録の瞳孔の改ざんを命じたり自分自身改ざんし」と「佐藤を守るため」に逆戻りしている。これは、甲第134号警察官調書(臨床工学技士長を守るため)→甲第139号検察官調書(佐藤を守るため)→甲第135号警察官調書(臨床工学技士長を守るためというのは間違いで、佐藤を守るためが正しい)と同じく、検察官の事件の見立てについていけない警察官が、一段階前の理由づけを書いてしまったものである。

  

  カ 検討

  (ア)供述の変遷が信用性に与える影響

     以上のように、カルテ改ざんの理由についてのS講師の説明は変遷に変遷を重ね、最終的には、「自分にはミスはないが、医療過誤がわかると、心研ではチームリーダーが責任を取らされ、人事上の不利益を蒙るので、カルテを改ざんした」というものになった。

     一般に供述の変遷は、それだけで供述内容の信用性を減殺する。特に、カルテ改ざんを何のために行ったのかという中核的な理由づけが上に見たように目まぐるしく変転している場合には、供述全体について信用性を認めることができない。

  

(イ)人事上の不利益の証拠はない

 したがって、カルテ改ざんの理由に関するS講師供述全体が信用できないとしてよいが、ここでは、最後の理由である「人事上の不利益を蒙らないためにカルテを改ざんした」ということが成り立ちうるのかを検討する。

     もともと、S講師は、自分に手術ミスはなく、刑事事件になれば、佐藤に責任があることはわかると思っていた(乙21・13頁)というのである。したがって、このことは民事裁判でも同様のはずであり、医療過誤裁判が提起されてもS講師は、自分に不利益が生じることはないと確信していたはずである。

     それにもかかわらずS講師がカルテの改ざんを行ったのは、心研が、責任が誰にあるかを問わず、チームリーダーに責任を押しつけるという不合理なことをするので、人事上の不利益を蒙らないようにするためであるとされている。

しかし、「心研という組織がそのような不当な取扱いをしている」というのは、S講師が言っているだけであり、客観的な裏づけはない。S講師は、主任教授のS講師に対する発言を問題にしているようであるが、A医師が述べているように、主任教授が言っていたのは「手術を統括する、いわゆる術者として下の者を指導したりとか、術者として、人工心肺も麻酔も、関係しているすべての人たちを患者さんのためにいい治療ができるように協力させていくというのも術者としての非常に重要な、オーケストラの指揮者的な役割がある。そういったものを重要視しての発言」ということなのであって(A医師・13回・4-11~12頁)、極めて当然のことである。この発言が、チームリーダーはどんな場合でも責任を取らされ、左遷させられてしまうことの根拠になるものではない。

  

(ウ)人事上の不利益は「カルテ改ざん=犯罪」の理由にならない    

     さらに、S講師の供述を100%信用したところで、そこで問題にされているのは、せいぜい「人事上の不利益」である。どこか関連病院に飛ばされるという程度のことである。

これに対し、カルテの改ざんは、通常の医師であれば考えられない行為であり、それだけで懲戒解雇されたり、刑事事件で起訴されたり、医道審議会で処分されたりすることが確実に予想される行為である。

このように人事上の不利益とは比較にならないほど厳しい結果が生じることが確実で、医師の基本的倫理に反する行為が軽々になされるはずがない。まして、それが自分の責任を逃れるためでなく、他人(佐藤)の刑事責任を逃れさせるためなどということは絶対にありえないことである。

このように、将来、関連病院に飛ばされるという不利益を避けるために、医師の身分に影響を与えることが確実なカルテの改ざんを行ったというS講師の説明が著しく不合理なことは明らかである。しかも、S講師の行為は、十分に考える時間的余裕がある中で行われたものであり、激情犯のようなものではない。このようなことを、医師たるものが行うはずがないのである。

もちろん、「犯罪は常に引き合わないものであり、犯罪に手を染めるときの判断は不合理なものである」という言い方は可能である。しかし、その場合でも、「このままだと○○となるから、そうならないために、□□しよう」という判断は行われている。将来、発生するかどうかもわからないし、また、左遷といってもどこに行くのかもわからない「人事上の不利益」を避けるために、今、ここでカルテを書き直させるという判断はありえないことである。医師としての身分を失わせるかもしれないカルテ改ざんの理由は、これに匹敵する目前の不利益を防ぐということでしかありえない。

すなわち、S講師は、患者死亡の原因が脱血不良であり、これが自らのミスによって生じたことが明らかになることによって生じる一切の不利益を回避するためにカルテの改ざんを行ったものと考えるのが自然である。そして、これは、正に任意捜査の段階、すなわち、事件の見立てができていないために、捜査機関の誘導が比較的少ないと思われる段階での、S講師自身の供述と同じなのである。S講師は、そこで述べているように、「明香ちゃんの心臓手術中、脱血不良から脳浮腫をひきおこした責任追及に恐怖心が湧いてき〔て〕」、「自分の刑事責任を問われ大学をクビになる」ことを恐れ、「全て自分が刑事責任から逃れようとして」、「自分の保身のために」カルテを改ざんしたのである。

このように解してこそ、S講師が、医師の身分を賭してまで、カルテの改ざんを行った理由が了解されるのである。

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2006年7月19日 (水)

黒澤教授との電話(一部)

以前のブログ2006年7月7日「東京女子医科大学からの返答」に「ブログでは、「失ったものを取り返す」の続きを書こうと思っていましたが、次回は公開質問状の送付直後にあった、私と黒澤教授の電話について書こうと思っています。」と記載してしがたきをしながら、他の書き込みをしてしまいました。期待されていた方には、小児循環器病学会以前に読んでいただいた方が良かったかもしれません。2ちゃんねるの書き込みhttp://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1126530943/l50

で指摘されていたようですので遅ればせながら書かせていただきます。

200667日 1755

女子医大内線電話

佐藤(S)○○病院の佐藤ですけれども。

黒澤教授(K)ああ一樹君。おうこんにちは。

S こんにちは。お電話いただきましたので。

K公開質問状こちらに来たので驚いたのだけれども、先生はこれからいろいろやることがあるだろうし、あのー、当面僕は何すればよい?僕の方では、今回の先生の手紙とは関係なく内部調査報告書自体が問題あるっていうのは前からずっといっていたんでね、落ち着いたらみんなでレビューしなければいかんだろうとそういう話はしていたのだけれども。みんなでやったらどうですかということを今、提案しているのだけれど

S私としては、質問にお答えしていただければ結構です。

K大学が答えるということになっているので何らかの答えがあると思うよ。・・・

細かい点なのだけれと、こちらから情報が十分伝わってないことがあるようだけれど、・・・。そっちでは、内の教室員と誰か会う。話するの。だったらその時に聞いてみたら。・・」

等と会話が続きます。

以下、会話の要点

    会議がいろいろあって、内部報告書の撤回を求めた佐藤からの内容証明に対する会議があったかどうかも忘れた。(佐藤が、「一月に東間元院長、尾崎麻酔科主任教授(内部報告書の作成に関与)、黒澤心臓血管外科教授、院内実地検分に立ち会った医師、児玉弁護士(医師とのダブルライセンス)で会議をしたはず」であることを指摘したが、)記憶にないとのこと。

・公開質問状から読み取れる情報の中には、私が誤解していることがあると思う。教室内の情報は正確に把握してから、発言してもらいたいので、それを私に近い医局員に聞いてみたらどうか。

これに対して、複数の医局員に質問したところ、

「術者の医師の留学に反対していたのは、一部の人なので、そのことはに関しては医局の多数派の意見とは言えない。他は、誤解というところはないのではないでしょうか。」

「黒澤先生には、あれくらいのことやらないと分からないんですよ。今でもわかってないんだから、もっと強くやってくださいよ。」

他、三教授に関する処分の予測などが、いろいろ言われているとのこと。

噂なので、一々記載しませんが、厳しい処分にすべきだという意見があるとのことでした。

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2006年7月13日 (木)

新聞各社の無罪報道比較

このブログ以外のスレッドに、

「先生(私)はマスコミを訴えていますので、マスコミの反応が鈍いのでしょうが、本来なら、今回の事件を報道した全てのマスコミが真相究明の為に検証を行うのが筋だと思います。」とのご意見をいただきました。

 これをきっかけに、無罪判決直後に代表的な新聞がどのような報道を行ったかを読み直してみました。

 私の父はある全国紙の記者だったこともあり、小学生のころから新聞の読み比べはよくやりました。特に、湾岸戦争が勃発した当時等は、5大全国紙は記事を読むだけで、どこの新聞社か当てることができる程、各社の色がはっきり出ていました。私の事件報道に関しては、「やはりな。」と思う新聞社も「以外だな。」と思う新聞社もありました。国際政治と医療事故報道に対する報道姿勢にはあまり関連がないからだとは思います。

 各社「判決」と私の記者会見(40-50分間)をソースとして、無罪判決の事実とその理由以外にいろいろと書いています。

ただ羅列しても面白くないので、以下の3点に絞ってまとめてみました。

①判決にある女子医大の責任に関する報道

②内部報告書の誤りに関する報道

③医療事故の解明と刑事事件に関連する報道

朝日新聞(以下、五十音順)

①なし

②判決は、人工心肺の回路のフィルターが詰まったことが死亡につながったと認定。ポンプの回転数を長時間上げすぎたことが主な原因とする東京女子医大の調査報告書とは異なる判断を示した。 佐藤医師は「報告書は学会でも誤りだと指摘されている。起訴状はその報告書に追随したものだった」と検察側を非難。「東京女子医大は報告書を取り下げるか、誤りと認めるべきだ」と古巣にも批判の矢を向けた。

③強調したのは、医療事故をめぐる真相解明のあり方だった。「警察も検察官も裁判官も、医学の専門知識はない。医療事故が起きたとき、何が起きたのかは専門家が判断し、過誤があると分かった段階で司法が介入すべきだ」と述べた。

産経新聞

①なし

②自分のミスで明香さんが死亡したとする女子医大病院が作成した事故報告書について、「法曹界からも全くの誤りと判断された。撤回すべきだ」と病院側を批判。

③「(専門性が高い)医療過誤は第三者の専門家が原因を究明し、その後に司法は介入すべきだと思う」と持論を展開した。

上毛新聞(患者さんの居住地の地方紙。共同通信配信の部分がある可能性あり)

①なし

②同病院は事故直後、佐藤被告が吸引ポンプの回転数を上昇させたことが事故原因とする報告書を発表。報告書は検察の論拠にもなっている。 これには日本胸部外科学会などが否定的な見解を示しており、「(佐藤は)専門医でない人がやった特定機能病院の資格を守るための調査で医学会(ママ)も否定された」と同病院を批判した。

③なし

東京新聞

    なし

    佐藤医師は「起訴状は東京女子医大の調査報告書を追随する内容だが、報告書は心臓外科以外の医師がまとめたもので、学会も間違っていると判断している」と指摘。

    なし

日本経済新聞

①「構造に瑕疵がある」と判決で指摘された人工心肺装置は、・・・同病院の医療事故被害者連絡会のメンバーは「今回の裁判では危険性のたかい人工心肺装置を使った病院の問題が解明されていない」と指摘している。

②(佐藤は)「判決で、(被告の責任を指摘した)東京女子医大の内部報告書や、それに依拠した検察側の主張の誤りが明らかになった」と述べた。

③さらに、「欧米では大学病院などで医療事故が起きると、専門知識を持った他大学の医療スタッフが調査にあたるが、日本ではシステムが整っていない」と指摘。事故原因が刑事裁判で追及されることに疑問を投げかけた。

毎日新聞

    判決は「危険な装置を使用していた女子医大の責任が問題となる余地はある」とも言及。

    なし

    なし

読売新聞

①(判決は)「必要性が乏しいフィルターが取り付けられていた」とも述べ、人工心肺の構造に欠陥があったと認定。「危険な装置を設置していた東京女子医大の責任は問題になる」と指摘した。

②佐藤被告も会見し、「誤った内容の東京女子医大の内部報告書に、警察、検察が依拠したことが明らかになった」と語った。

③中立的な専門家による事故直後の調査の必要性が改めて浮き彫りになった。

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2006年7月11日 (火)

医療と健康 「東京女子医大事件の判決について」

 私の無罪判決が出される前から、判決後に各報道や、ウエッブ上では、いろいろな意見が出されると思っていました。しかし、ながら、本質を見ようとするマスコミは余り多くありませんでした。どのマスコミも「内部報告書」が誤りであったことは、三学会や私の記者会見でのコメントから認めているような書きぶりですが、積極性はなく、そこを掘り下げて報道したところは、今のところはありません。今のところは。

 しかし、なかなか鋭い観点から見ていた人達もいます。医療関係一般のブログを作成している人の中に何人かいました。

 中でも、情報を背景にもっともよく考えて意見をしているブログを紹介させていただきます。必ずしも、予想などが全て正しい訳ではありませんが、医療界全体に対する意識レベルが高く、公開されている情報を駆使して真面目に考えるとこのような意見が形成されるのだろうと思います。

「厚労省の疑いは晴れていないようだ。今年、厚労省自らの監査(異例中の異例)を2回も行い東京女子医大の医療行為状況を調査している」という下りができてきますが、厚労省の方々には、是非「内部報告書」の虚偽の記載について追求していただきたいものです。

http://blog.so-net.ne.jp/medi_rmk_ems/

ブログ 「医療と健康」

東京女子医大事件の判決について  [医療事故]  

 昨日、ニュースで東京女子医大心臓手術の刑事裁判の判決が出ていた。審議(ママ)経過は分からないが無罪判決だった。前にも書いたが、刑事事件の99%は有罪判決を受けるという中、かつマスコミにあれだけ騒がれた事件であっても無罪判決が出たということは、裁判官の司法に対する真摯な態度と弁護士の地味な努力が実を結んだという大きな事案になるだろう。一方検察は大きな痛手になったはずだ。警察官の地道な捜査活動が水泡に帰したのだ。(警察官はいい加減な捜査をしていましたし、真実は無罪であることを分かりながら逮捕したので、『水泡にきした』というのは間違えです。佐藤)

 このまま判決が確定したら、証拠隠滅で有罪確定した医師はどうなるのだろうか?女子医大の今後の対応はどうなるのだろうか?そして被害者の会の人たちの対応はどうなるのだろうか?東京女子医大は、おそらく今までのスタンスを崩すことはないはずだ。安全管理、一般公開、そして監査と受けるべきものはすべて受け入れ今後もますますその傾向を強めるだろう。(残念ながら、この事件に限っては、一般公開という受けるべきものを受け入れませんでした。佐藤)

 無罪を勝ち取ったこの医師は普通の医師に戻って静かに暮らせるのだろうか、この医師の名誉回復は難しいだろうというより雇い入れる病院は少ないだろう。それが故におそらく、東京女子医大に対して内部調査のずさんさなどを含めて女子医大への損害賠償請求の提訴が行われるのは目に見えている。それだけでは済まないはずだ。被害者の会も言われなき名誉毀損も損害賠償の対象になるはずだ。是非、被害者の会と称する団体に対しても訴訟準備をしてもらいたいと思う。その理由は社会的なインパクトが余りにも大きい事案だったからだ。特定機能病院の再取得にも大きな影響を与えるはずだ。(筆者は内部調査のずさんさを充分理解されている。おそらく、「内部報告書」そのものや「三学会報告書」も閲覧されたのでしょう。佐藤。)

東京女子医大のマスコミによるマイナスキャンペーンは50億円を下らないと計算した人がいたが、それ以上の影響があったはずだと思う。決して東京女子医大を擁護するつもりはない。しかし、この判決を生かそうとするならば司法の場ですべてを明らかにするべく対峙する東京女子医大と被害者の会の双方が司法の場で議論してもらいたい・・・(もう少し期間を置いてこの事件は検証したい。現在詳細を調査中)

東京女子医大事件(1)  [医療事故]  

東京女子医大の心臓手術ミスによる死亡事故が刑事事件に発展した。この事件の内容は先にも書いたがいろいろなマスコミに取り上げられている。いろいろ調べても同じようなものだと思うが、確かに感じた疑問点を何回かに分けて書いてみたい。

第一は、民主党に対する疑問だ。民主党の中に「民主党東京女子医大医療事故被害者支援チーム」というチームを2002年8月4日に立ち上げている。そこでは何を目的にしているのか分からないが東京女子医大医療事故問題に関する情報提供の呼びかけをおこなっている。 http://www.dpj.or.jp/iryo/

 公党しかも次代の政権を担う可能性のある党が「日本全体で起きている医療事故問題を是正するために情報提供の呼びかけを行っている」というのなら理解できるが、東京女子医大の医療事故だけを取り上げて情報提供を呼びかけているのには何か違和感を覚える。このチームの座長と事務局長の党の役職を見ても関連性はなく、経歴から見ると座長が医師だということぐらいだ。

 単純に東京女子医大に対するバッシングに乗って世論、マスコミの注目を集めたいためにこのようなチームを作ったと言うことが本当のところなのだろうが、それではあまりにも底が浅いし軽率だと思う。真摯にこの問題を取り上げているとするなら今回の無罪判決に対する公党としての見解を発表するべきだと思う。そうでなければ、マスコミと同じようにセンセーショナルな見出しをつけてマスコミや世間の注目を集めるだけの行為のようにしか見えてこない。そのような行為は、公党であるがゆえに厳に慎むべきだと思うのだ。

東京女子医大事件(3)  [医療事故]  

第3の疑問は、「東京女子医大病院被害者連絡会」についてだ。いろいろ調べてもこの会の存在が明らかでないというよりどこに事務局がありどこに意見の主張(例えばホームページ)があるのかよく一般に分からない。

存在実態が無いとは言わない。厚労大臣に面会出来る程の団体だ。しかし、素朴な疑問も沸いてくる。ふつう被害者連絡会は集団訴訟も辞さないために弁護士をたてて行われるものだ。その弁護士が被害者連絡会を代表して連絡先になり、記者会見なり、訴訟なり、話し合いなりを行うのが普通だ。なぜ弁護士を使うのかというと、当事者間の話し合いではしこりが残ると同時に弁護士同士の話し合いで調整がつく場面と、裁判に持ち込む場面とそれぞれの実態に合わせて手法を容易に変えられるからだ。当事者は時間に制限があり十分な納得が得られないのが実情だからだ。

ところが、平成16年3月18日、東京女子医科大学病院と東京女子医大被害者連絡会は共同記者会見を行ない、「医療事故の疑いのある事例について事故原因の調査を共同で進め、真実を明らかにするとともに、法律的な手段をとらずに両者で話し合い、穏やかで速やかな問題解決の道を探るよう努力する」と発表した。東京女子医大は、すべての被害者連絡会会員に対してこのような手段をとるということを宣言したが、共同調査を行う相手方の医学的知識有無、被害者としての感情などを全く無視するのだろか。

明確に言えるのは、このような方法で、速やかに真実を明らかにすることは不可能に近い。やはり、弁護士など手を借りることが必要だと考えるのだ。今回出た判決の反応に「頭の中がまっ白になった」と答えたご両親。当然の反応とは言え、この反応で法律的な手段を取らないで穏やかで速やかな解決の道を探ることは出来ない。人はそんなに無感情ではない。被害者連絡会に加わっている人たちは当事者なのだ。その当事者が感情を抜きに、加害者としている東京女子医大と率直な話し合いが出来ると思う方がどうかしている。

そこで調査方法は、連絡会側との協議により結成された内部調査委員会で詳細な事実調査を行ない、調査結果の妥当性や見解の相違などを第3者委員で構成される医療事故調査検討委員会で審議する方式をとるということだ。その結果が被害者連絡会の思いからはずれていたとしたらおそらく納得することはない。そして、それにかかる費用はどこから捻出されるのだろうか。

 おそらく、速やかな解決が出来たとしても、新聞報道によると30家族が構成している被害者連絡会の事案を解決するだけで東京女子医大は経済的に破綻するのではないだろうか。東京女子医大も被害者連絡会も泥沼に足を踏み入れたと思う。


東京女子医大事件(3)  [医療事故]  

第3の疑問は、「東京女子医大病院被害者連絡会」についてだ。いろいろ調べてもこの会の存在が明らかでないというよりどこに事務局がありどこに意見の主張(例えばホームページ)があるのかよく一般に分からない。

存在実態が無いとは言わない。厚労大臣に面会出来る程の団体だ。しかし、素朴な疑問も沸いてくる。ふつう被害者連絡会は集団訴訟も辞さないために弁護士をたてて行われるものだ。その弁護士が被害者連絡会を代表して連絡先になり、記者会見なり、訴訟なり、話し合いなりを行うのが普通だ。なぜ弁護士を使うのかというと、当事者間の話し合いではしこりが残ると同時に弁護士同士の話し合いで調整がつく場面と、裁判に持ち込む場面とそれぞれの実態に合わせて手法を容易に変えられるからだ。当事者は時間に制限があり十分な納得が得られないのが実情だからだ。

ところが、平成16年3月18日、東京女子医科大学病院と東京女子医大被害者連絡会は共同記者会見を行ない、「医療事故の疑いのある事例について事故原因の調査を共同で進め、真実を明らかにするとともに、法律的な手段をとらずに両者で話し合い、穏やかで速やかな問題解決の道を探るよう努力する」と発表した。東京女子医大は、すべての被害者連絡会会員に対してこのような手段をとるということを宣言したが、共同調査を行う相手方の医学的知識有無、被害者としての感情などを全く無視するのだろか。

明確に言えるのは、このような方法で、速やかに真実を明らかにすることは不可能に近い。やはり、弁護士など手を借りることが必要だと考えるのだ。今回出た判決の反応に「頭の中がまっ白になった」と答えたご両親。当然の反応とは言え、この反応で法律的な手段を取らないで穏やかで速やかな解決の道を探ることは出来ない。人はそんなに無感情ではない。被害者連絡会に加わっている人たちは当事者なのだ。その当事者が感情を抜きに、加害者としている東京女子医大と率直な話し合いが出来ると思う方がどうかしている。

そこで調査方法は、連絡会側との協議により結成された内部調査委員会で詳細な事実調査を行ない、調査結果の妥当性や見解の相違などを第3者委員で構成される医療事故調査検討委員会で審議する方式をとるということだ。その結果が被害者連絡会の思いからはずれていたとしたらおそらく納得することはない。そして、それにかかる費用はどこから捻出されるのだろうか。

 おそらく、速やかな解決が出来たとしても、新聞報道によると30家族が構成している被害者連絡会の事案を解決するだけで東京女子医大は経済的に破綻するのではないだろうか。東京女子医大も被害者連絡会も泥沼に足を踏み入れたと思う。

東京女子医大事件(4)  [医療事故]  

最後の疑問は、東京女子医大本体の問題だ。なぜ、こんな事態を招いたのだろうか?初期対応のまずさは否定できない。この事件に関しても同じである。カルテの改ざんと人工心肺装置の施工不備を分けて対応するべきだったと考えるのだ。

一般に、事故隠しを前提にカルテ改ざんが行われるのだから一連の行為としてとらえがちだが分解する必要があったのではないだろうか。死亡した原因とカルテ改ざんという2つにだ。決してカルテ改ざんをした事が良いというわけでない。これは刑事事件として有罪で罪が確定している。

死亡事件となった人工心肺の担当医師は無罪の一審判決だ。とすると民事的解決は終了しているこの事件はもう過去の事件として医療機関の教訓的事例として語り継がれなければならない。

そこで浮かび上がるのが東京女子医大本体の問題だ。その問題とは”カルテ改ざんを許す体質”を改善する事にある。医療技術については、元巨人軍のN監督や北朝鮮から帰ってきたJ氏も入院している事からも明らかだ。したがって、いわゆる医療行為の中での順法精神の確立と言うことが問題となるのであろう。そのために病院上層部は、病院の変革について公共放送で内部公開する。前回述べたような第3者機関を作るなどその方法の是非は別問題として誠実に対応しているように見える。普通の医療機関では対応できないような思い切った手を打っている。医療機関としては大きく変貌したと病院の一つであることは間違いない。(これは、間違えではないが、一部だといえるでしょう。上層部は本質的には全く変わっていません。佐藤)

しかし、厚労省の疑いは晴れていないようだ。今年、厚労省自らの監査(異例中の異例)を2回も行い東京女子医大の医療行為状況を調査している。何らかの不正行為があると考えているのかあるいは特定機能病院の復活を前提にした監査なのかはわからない。

一般の病院に厚労省の課長級監査が2度も実施されたと言う事実からみると、未だ何らかの不正行為があるのだと言う認識なのだろうと考えるのが普通だ。とするならば、病院の保健医療機関取り消しをもくろんでいるのかもしれない。そのようなことになったとしたら社会的に大きな影響を与えることになるのは確実だ。

となると、今後の厚労省の方策は、東京女子医大の経営権問題(理事長の交代)や厚労省に近い政策集団の介入そして隠れた天下り先として確保するというような形が想像できる。ともかく、東京女子医大の役員・教授・講師・非常勤講師名簿を見ると茫然自失の感は否めない。もういろいろなことが始まっているのかもしれない。そして、エンドレスで片付かない医療事故問題が一つのバネになっている。

 

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2006年7月 7日 (金)

東京女子医科大学からの返答

「counterreply_from_twmu.pdf」をダウンロード

前回のプログにも記載しましたように、6月27日付けで女子医大から返答が来ました。

まったく予想通りでした。以下写しです。

             平成18年6月27日
佐藤一樹殿

学校法人東京女子医科
 平成18年6月2日付で当法人理事長宛に送付された
公開質問状については、同質問状に係る刑事裁判が現在
係属中でありますので、回答は差し控えます。

「公開質問状に係る刑事裁判が現在係属中でありますので、」

とありますが、質問に答えると女子医大にとって刑事責任が追及され悪影響があるとしか理解できません。

「女子医大は、公開質問状に答えると、病院が佐藤に責任をなすり付け、病院の責任を隠し通そうしたことが、裁判で明らかにされていくから、質問に答えない。」というようにこの返答をうけとります。

女子医大の現在までの態度は、内部報告書を作成しそれを受け渡したり公表した以下の人や機関に属する全員に対する侮辱と言えます。

1.亡くなった患者さん

 女子医大の東間元病院長、笠貫教授、黒澤教授は、この内部報告書を手に亡くなった患者さんの墓前にもう一度立つことができるでしょうか。

2.遺族

 遺族は本当の事故の原因を知りたいと思っているはずです。この内部報告書で混乱させられてしまったはずです。

3. 厚生労働省

 2001年12月特定機能病院の認定剥奪を回避するためにこの報告書は提出されました。これを取り下げないのであれば、厚生労働省は絶対に再認定することはないでしょう。

4.日本心臓血管外科学会、日本胸部外科学会、日本人工臓器学会

 学会は、科学者として、労力を惜しまずにこの事件を真面目に検討し報告書を作成しました。これに対してその調査に非協力的であった女子医大、特に黒澤教授はどういう評価を下しているのでしょうか。非協力的であったことは、結果をだされるのを恐れていたからに他ならないのでしょう。

5.メディア各社

 メディアを通し誤った情報を提供された国民も同様です。

6.警察

 警察も途中からこの報告書が誤りであることに気づいていました。詳細は執筆に記載しようと思いますが、警察と女子医大は私と医局員の電子メールを許可なく閲覧し、私と女子医大内の内線電話を検閲していました。(さすがに頭に来た医局員が浅井という司法警察員にくってかかったところ「警察だからねー。」との答え。警察だから不正をやってもよいという意味にしかとれません。

 現段階において、検察が味方に付けようとする機関は全世界中、女子医大のみでしょう。個人的には、フィルターを設置した臨床工学士さんに頼らなければならないのでしょう。検察官は、控訴後に最低でも2回彼を訪れ、

「三学会の報告書の内容は本当か。」旨

質問したそうです。逮捕前の捜査段階では、この技士さんの責任について検討がされていたようです。彼が現場検証でどんな発言をし、どのように追いつめられ、何を話ししたかは警察調書、検察調書や公判で私には分かっています。そのことをとやかくいうことは避けますが、そのような立場の臨床工学士の発言と、東京大学と慶応大学と東京医科歯科大学と埼玉医科大学の各教授の名前で発表された「三学会報告書」を比較する検察官も破れかぶれになっていると思います。

 ブログでは、「失ったものを取り返す」の続きを書こうと思っていましたが、次回は公開質問状の送付直後にあった、私と黒澤教授の電話について書こうと思っています。

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2006年7月 3日 (月)

女子医大からの返答と小学館訴訟

2006年6月27日付けで女子医大からの回答が私の自宅に送付されました。

 この件につきましては、次回ブログ書き込みします。

 というのは、今日はこの後、明日7月4日に、私が原告として本人訴訟を提訴している小学館に対する裁判期日があるため、その準備をするので、書く時間が限られるからです。明日の訴訟は、「名誉毀損」のみです。

 本人訴訟では、6月28日のブログでも書きました「NHKの訴訟」と同様代理人なしで、自分で、「訴状」や「準備書面(裁判で陳述する弁論の内容)」を書きます。テレビでの法廷シーンでは民事の通常の弁論の場面などはほとんど出ないので、ご存じない方も多いと思います。「弁論を陳述する。」といっても、法廷で格好良く「語る」のではなく、裁判官から、「弁論を準備書面のとおり陳述しますか。」と聞かれ、「はい陳述します。」と答えるだけです。だから、明日の準備をするといっても、やることはありません。ただし、事務的なレベルとちょっとした何かを質問される可能性がありますので、今までの書類を読み込んでおく必要があります。

 小学館に、企業内弁護士さんは、おそらくいない様子で、ある法律事務所に依頼されているようです。勿論、いつも依頼される事務所は(複数かもしれませんが)決まっているようで、やはり弁護士さんもスペシャリストでしょう。

 「女性セプン」という雑誌の記事を対象にしていますが、刑事裁判の最終弁論後に、大宅文庫(八幡山にある雑誌専門の図書館)で検索して記事を知りました。名誉を毀損されたのを知ってから3年以内に提訴すれば、よいのです。この期間であれば、消滅時効期間は経過していないので、記事が4年前のものでも提訴できます。古い記事で名誉を毀損されたことを最近3年に知ったのであれば、提訴できるということです。

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