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2006年11月15日 (水)

自由と正義と約束の重み

『自由と正義』日本弁護士会連合会会誌 2006年9月号 

巻頭 「ひと筆」p5-p8より

「「夢に可能性を!」 吉峰康博弁護士 

人間は常に夢を持てるか

?

私は少なくとも、いつも夢を持っていた。人には話せない、おかしな夢もたくさん見て来た。実現した夢もいくつもある。自分が努力さえすれば何でも現実になると信じられた時期もあった。・・・ 

 私は、平柳明香(あきか)さんの手術を執刀し、事件後カルテ改ざんで証拠隠滅罪に問われた被告人S講師の主任弁護人だった。・・・私は『医療過誤弁護団』の不良団員であったが、近年は『小児医療と法研究会』(代表鈴木利廣)の事務局を務め、私の事務所を例会会場としていた。

『任意の取調べ』とは?

 ・・・被疑者は当初から、一貫してカルテ改ざんの事実を認めている。・・・被疑者を、警視庁は、逮捕に際し故意に顔をテレビカメラに写させたのである。しかも、身柄の拘束は再三の保釈請求にもかかわらず三ヶ月にも及んだ。

は再三の保釈請求にもかかわらず三ヶ月にも及んだ。

さて、私は、二〇〇二年一一月、この事件の裁判が週一回(午前一〇時~午後五時)のぺースで始まった直後に、(佐藤注:実際は月2回のペース)脳出血で倒れた。当時私はこの事件を含め身柄事件を三件抱えていた。土・日もなく連夜接見に通っていた。倒れて約三カ月近くは意識不明であった。この間「あの事件はどうなった?○○さんに連絡してくれ!」等としきりにうわごとを言っていたという(妻の話)。しかし次第に言葉を失い、全く話せなくなってしまった。意識が戻っても入院中は、夢を失い、新聞、テレビにすら興味を持てなかった。約一年弱入院し、退院後も毎週二回リハビリのため通院している。その間、弟の吉峯啓晴弁護士はじめ弁護団がこの事件をやり通してくれた。

・・・

『約束の重み』

さて、S医師の判決は、二〇〇四年四月、懲役一年(執行猶予三年)の刑が確定した。・・・翌年二月明香さんのご両親から手紙が弁護団宛に届いた。「御兄様の吉峰康博弁護士と、S医師に関しては医道審議会に上申書を出すとの約束をしておりましたので、厚生労働省に行政処分の軽減を上申します」。被害者側から「重く罰するより、良い医師として新たな道を歩ませる機会を与えることも大事」との上申書が提出された例はないという。私は「(病気のため)最後まで御一緒に闘うことの出来なかった私との約束をこんな形で果たして下さった平柳様御夫妻の御厚情を心底有り難く思い、深く御礼申し上げます。……この間の御両親様の悲しみと苦しみ、そしてその中でひたすら続けてこられた明香ちゃんの死を無駄にしないための闘いを思い頭が下がります。」とのお礼の手紙を出した。S医師は資格剥奪を免れ、この上申書のおかげで、三年間の資格停止の処分が一年半となった。私は約束の重みを感じ、自分の心がきれいに洗われた。

・・・

 私は現在、毎日が実に楽しい。依然として右半身は麻痺、視力は落ち聴力は不十分であるが、・・・毎日どれほど多くの人に自分の人生が支えられていることか。私の夢は一歩一歩実現している。・・・

 私の最終的な夢は『弁護士のブラックジャック』になることである。

IZa TOP page by 産経新聞 20061029 11:41より

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/life/health/25291/

≪死亡女児 両親の訴え実る≫

 カルテ改竄を主導した東京女子医大病院の元担当医に対する保険医登録の取り消しは、事故でまな娘、明香さんを失った両親による粘り強い訴えの成果だ。

 父親の平柳利明さん(56)と母親のむつ美さん(46)は、娘の死に対する病院側の説明に疑問を持ち、事故直後からカルテを証拠保全するなど真相究明に奔走してきた。

 そのカルテ自体が大幅に書き換えられていたことを知ったのは、警察の捜査が入ってからのことだ。

 平成14年6月に元担当医が証拠隠滅容疑で逮捕された後、利明さんらは同年10月、(佐藤注:吉峰康博弁護士が倒れたのは同年11月直後。)ミス隠しのために改竄されたカルテに基づいて、つじつま合わせの保険請求が行われた」として、東京都や東京社会保険事務局、厚生労働省に、改竄に関与した医師の処分と病院への監査を求めた。

 厚労省は当初、「現状では不正とはいえない。指導や監査も行えない」とはねつけたが、利明さんらは「カルテに本当のことを書いていなかったら、事故があっても真相の解明が難しくなる」と、監査を求め続けた。

 厚労省は昨年4月から複数回にわたり、健康保険法に基づく立ち入り監査を実施した。調査は不正請求の額よりも、医療事故の隠蔽(いんぺい)行為を重視して進められた。

 5年間の保険医登録取り消しは医師にとって「廃業」に等しいことだろう。「カルテを適正に書かないことは違反であること。改竄はリスクが高いことを知ってほしい」。利明さんはこう語っている。

この国のシステム

 吉峰康博弁護士、S医師との間の「約束は守られた」。しかし、現在でも

吉峰弁護士は、「自分の心がきれいに洗われた。」「私は現在、毎日が実に楽しい。」「毎日どれほど多くの人に自分の人生が支えられていることか。」という文言を口にできるのでしょうか。

 平成17年2月3日 医道審議会医道分科会議事要旨によると、このときの出席者は、(以下敬称略)(委員) 岩井宜子、植松治雄、片山 仁、鎌田 薫、見城美枝子、赫 彰郎、堀田 力、山路憲夫 (厚生労働省) 岩尾医政局長、岡島審議官、原総務課長、中垣医事課長、日髙歯科保健課長、宮澤試験免許室長、

田原医師資質向上対策室長他ある通り、斯界の権威によって構成されています。それがなぜ、個人の上申書によって覆ってしまうのでしょうか。この国家のシステムは、専門家の集まりによって決定された国民全体に関わる事柄を、何の知識も有さないが、被害者という印籠を振りかざされた途端に変更してしまうほど脆弱なものなのでしょうか。(→*http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/cat3889615/index.html「大野病院事件」初公判に向けてのエール 「医療事故と検察批判 」―東京女子医大事件、血友病エイズ事件、両無罪判決より- 8月15日ブログ参照)

 医道審議会の時点で、「3年間とか5年間の医業停止」と決定されただけでよかったはずです。胸くそ悪い思いをしているのは、吉峰弁護士だけではないと思います。

 心臓外科学における「斯界の権威」によって構成された3学会合同 陰圧吸引補助脱血体外循環検討委員会は、女子医大内部の人間ではなく、外部の委員のみで報告書の「オリジナル版」の作成に尽力を傾け、専門家とし客観的に作成されました。

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/cat3890233/index.html

 女子医大内部の黒澤博身教授と専門領域とは何ら関係のない、当時、「女子医大の変革が、当時の東間院長や黒澤教授によって行われている」という趣旨の番組を制作していたNHKの職員が、ちょこっとやってきて、報告書の配布の中止をもとめたり、自分に都合の悪い文言を訂正させたりしました。このことも、3学会委員や学会員にとっては本当に胸くそ悪いことだと思います。このような行動をおこした黒澤博身教授が、3学会の一つである心臓血管外科学会の会長をしようというのですから、酷いものです。なお、公開質問状に「第2 黒澤博身心臓血管外科主任教授への質問(エ)「黒澤訂正プリント」を発行させたのは、御自分の判断ですか、女子医大上層部の指示ですか、NHKの要望ですか。」に対してもお答えをいただいておりませんが、黒澤博身教授が悪の枢軸であることは間違えありません。

→「追悼!噂の真相」 (休刊記念別冊)

「孤軍奮闘編集長の深層心理」弘中惇一朗弁護士

「この国では、「被害者」という言葉が、特に最近は、非理性的に強くて、「被害者」という言葉をふりかざしたとたんに、国家権力に対してもさっと道を開いてしまう危うさがある。権力との対峙は、どこまでも理性的でなければならないのであるが、権力が暴走しないために作ったせっかくの枠組みを、「被害者」というエモーショナルなもので、ぐちゃぐちゃにしてしまう実情がある。」

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コメント

本日瀬尾医師の保険医取り消しの記事をみて怒りを覚えました。おおきな事件であればあるほど、ひとりの医師の責任問題では済まされないはずです。瀬尾さん、どうぞ落胆なさらないでください。日本国内の医師の80%は確実にあなたの味方です。

投稿: 芦屋 | 2006年11月15日 (水) 16時01分

 芦屋先生コメント有難うございました。
私の今回のブログの主旨は、先生のご意見とはかなり異なるものがあります。
 今回の責任は、明らかに瀬尾医師にあります。公判やマスコミには、主任教授の指示だと言われていますが、そのような指示はありませんでした。
 私がおかしいと思うのは、医道審議会で委員が「3年間の医業停止」という方針だったのを、何故被害者の上申書で簡単に覆ってしまうのかとうことです。「医業停止」の決定は、日本国の行政が行うことで、国民全体との関わりからなるもので、被害者との関係から決定されるのはおかしいという意見です。
 しかも、1年半に期間を短縮させておきながら、別の行政機関には、5年間の保険医停止を望んだというところが、不条理ではないかということです。
 

投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2006年11月16日 (木) 09時18分

こんにちは

いつも拝見させて頂いております。陰ながらではありますが、応援させて頂きたいと存じます。

また、拙ブログにトラックバックをお送りくださいまして、ありとうございました。当方には、それにお応えできるほどのページがございませんが、最近書いた中ではましかなと自分で思うところからトラックバックを送らせて頂きました。

投稿: 道標主人 | 2006年11月16日 (木) 20時58分

道標主人先生御侍史
コメントとトラックバック有難うございました。
先生の守備範囲の広い充実したブログの執筆は、背景に知力の実力がなければ困難かと思います。これからも宜しくお願いいたします。

投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2006年11月16日 (木) 21時17分

先生、こんばんは。

弘中先生の言葉、ずっしり重みがありますね。
今回ブログの夢のお話は、面白く、かつ冴える文章の一方で、
悲しくて、笑えませんでした。
当方、奇しくも今日、地域の医師会の勉強会に参加し、
「医業停止1年以上の処分が下って、実質休業すると患者さんは戻って来ませんから、医業を廃業するのと同じです」
という話を聞いて来たところでした。
もっとも、勤務医にはあてはまらないかも知れませんが。

明日、フライデーの判決ですね。
勝訴は当然としても、少しでも先生に有利な判決が下ることを祈ってやみません。

投稿: 勤務医 | 2006年11月16日 (木) 22時08分

勤務医先生コメント有難うございました。
 弘中先生は、本質を見極めている実力のある弁護士さんだと思います。(私が、こんな評価をすることはかえって失礼かもしれませんが。)「自由と正義」というけれど、法曹界でも、理想を掲げながらも、真にそれを目指している人がどれだけいるのでしょうか。検察官だって、任官するときは、正義感からなっているのでしょうが、所詮公務員。本当の正義感のある検察官がいてほしいものです。
 医業停止期間の決定だけでなく、専門領域の決定事項は、専門家によって行われるべきです。「規則とは例外の為にある。」という人もいますが、全国民に関連する事柄を専門知識が全くない個人の意見を簡単に反映させるべきではないと思います。
 フライデー訴訟はおかしな理由と説明が全くない理由で敗訴しました。控訴します。

投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2006年11月17日 (金) 18時59分

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