『大野病院事件』-支援戦略再考 草案執筆中
加藤先生の無罪が最優先
1.はじめに
2006年6月から私はブログを始めました。現在までに90000を越える閲覧があり、平均すると一日315。2007年1月26日までは、一日の閲覧数が1000を越えることは数えるほどで、最高でも1600強でした。
大野病院事件の傍聴記を書いたところ、1月29日は6854の閲覧があり、この4日間で26500の閲覧がありました。いかにこの事件が注目されているかを数字で実感しています。これだけの人数がいれば、何かができる。それは何か。
2.支援の方法論の再検討
閲覧者の皆さんからのコメントやご意見を多数いただきました。私のブログや自分のブログだけでなく、私の電子メールアドレスにも直接ご意見をいただいております。
実際に公判で検察側の「公訴事実」と「冒頭陳述」を傍聴したことと、皆様のご意見がヒントになり、
「今まで数多く出された『声明文』に加え、『追加声明文』を出す必要があるのではないか。」
と考えるようになりました。
「周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページ」http://plaza.umin.ac.jp/~perinate/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=FrontPage
には、本邦における重要な医学、医療関係の団体の「声明文」が掲載されています。
これらの立派な「声明文」は大変重要な役割を果たしたとは思いますが、次の段階に移る必要があると思います。(残念ながら、私は来週2つの本人訴訟(民事)と、控訴審(民事)と重要な提訴の予定がありその準備に追われています。これと平行して、各「声明文」を再読し分析し本稿を書きたいと思います。)
3.われわれは何を目ざしているのか
戦略を練るためには、明確な目標を掲げなければなりません。この明確化が必要です。
私は先ず最初に
「加藤先生の無罪を勝ち取る」
ことを挙げたい。「現場の医師が萎縮するので、有罪にすべきではない。」とか「産婦人科医が少なくなるから有罪にするな。」とか「過酷な医療環境を放置した行政に問題があるのだから無罪にしろ」「地域における医療体制の不備によって患者さんが亡くなったのだから不可抗力的事例だ」「予測困難な癒着胎盤症例だから・・・」という主張は、一見重要だが、検察官にとっては、「そんなことは本件刑事事件判決とは、関係ない。」のである。法廷は検察官の土俵上である。99.7%が有罪になる大横綱である。したがって、われわれは、検察官を彼らの土俵から引きすり落とし、「医学」のリング上に引っ張りこまなければならない。そこで、
次に、
「現在検察が『不同意』としている教科書、専門書、論文、鑑定書に『同意』させること。」
を挙げる。これがない限り、この裁判は長期化する。
このことは、現行法の下で、「通常の医療行為を行った医師が、結果的に患者さんを失ったために『逮捕』『「起訴」された全てのケース』に必要になってくる。起訴された全科の医師に共通したテーマになるはずだ。
「第三者の専門家(医師、医療従事者)による医療事故の真相解明および医療過誤の判定の制度化」「医師法21条の再検討」は大切だが、プロジェクトとしては大切であるが、二の次である。・・・
前回のブログのように、このテーマの本稿は再構築し発表する予定。しばしの間、私事の準備に移らせていただきます。
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コメント
禿同です。
加藤先生に罪を問うことが論理的に異常であるからこそ加藤先生は無罪であるべきなので、それ以外の社会的な理由、事情は副次的なものと考えます。
その点、これまでの声明の多くが社会的な諸事情に多く言及しているのは、むしろ本来の論理的な言説を弱めてしまうのではないかと思っていました。
周産期医療の崩壊をくい止める会が中心となって、論理に重きを置き、検察が「不同意」としている教科書、専門書、論文、鑑定書を証拠採用するように求める追加声明が出されることを期待しております。
投稿: わし | 2007年1月31日 (水) 15時06分
いつも、このブログで勉強させていただいております。ちょっと気になることがあり、コメントします。それは表題の事です。
すでにご承知の事とは思いますが、この項ではありませんが、表題が、東京女子大への公開質問状となっている箇所があります。もちろん、東京女子医大への公開質問状であることはわかりますが、一度、きちんとなおした方がいいと思います。揚げ足をとられないためにも
投稿: 1外科医 | 2007年1月31日 (水) 22時59分
1外科医先生コメントありがとうございました。「表題が、東京女子大への公開質問状となっている箇所があります。もちろん、東京女子医大への公開質問状であることはわかりますが、一度、きちんとなおした方がいいと思います。」とのご意見ですが、「カテゴリー」が誤っているとこうことでしょうか?具体的にはどの記事でしょうか。御教示いただければ幸いです。
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年1月31日 (水) 23時40分
モトけんさんブログ(情報提供田舎の消化器外科医さん)から転載します。
検察・弁護 冒頭陳述要旨(詳細版)
http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000004907
投稿: ましいい | 2007年2月 1日 (木) 00時01分
審理が始まった以上、ターゲットにすべきは検察官ではなく裁判官です。
そして裁判官を説得すべき、そして説得できる立場にあるのは弁護団です。
となると支援の対象とすべきは弁護団ということになります。
そのためには可能な範囲で弁護団から情報を提供してほしいと思っています。
投稿: モトケン | 2007年2月 1日 (木) 00時25分
モトケンさん
コメント有り難うございました。
勿論、裁判官がターゲットです。検察官に対して「証拠に『同意しろ』」とすごんだところで全く意味がないことは、私もよく分かっているつもりです。検察官が『同意』せざるを得ない状況を作りだす戦略を練ることはできると思います。
弁護団と私は連絡を取らせていただいております。
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月 1日 (木) 01時17分
カテゴリーの表題が、東京女子大への公開質問状となっています。素人の方が見たら、東京女子医大ではなく、東京女子大への公開質問状と思ってしまうかも
投稿: 1外科医 | 2007年2月 1日 (木) 10時51分
1外科医先生
ご指摘ありがとうございました。今までの数ヶ月全く気がつかず、先生に一回指摘されてもまだ分からないという状態でご迷惑をおかけいたしました。
今日訂正させていただきました。
妻と叔母や高校時代の同級生の多くが東京女子大を卒業したので、つい・・・。これからも気を付けます。
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月 1日 (木) 12時38分
先生のブログ、大変勉強になります。
わたしは千葉県で「地域住民が、地域の医療の再生を目指そう」とNPO法人をたちあげた一主婦です。
ミッションは「対話をする地域医療を育てる」で、主に対話の土台となる情報発信を中心に活動しています。
同じ地域にありながら、住民、医療機関、行政などそれぞれが持っている情報に格差があるので、まずは課題の共有を目指しています。
よろしければわたしたちのHPに先生のブログのリンクを晴らせていただきたく、メールしました。
よろしくご検討ください。
投稿: harutyan | 2007年2月 3日 (土) 09時45分
はじめまして。新生児医療に携わる者です。
先生のブログの存在を最近知り、勉強させていただいております。
大野病院事件、堀病院事件は、新生児医療にも大きな影響を与える事件だと認識しており、動向に注目しているところです。
これら二つの事件が「有罪」になるような状況では、産科はもはや成り立たないと思います。
私の勤務するNICUの周辺地域でも、産院が続々と閉院したり、不妊治療・妊検はやるけどお産はやらない、というところが増えています。
その結果、当院のような地域の中核病院に普通のお産が集中し、患者さんが溢れかえり、本来NICUのある病院で管理すべきリスクのある妊婦さんを受けきれなくなるような状況となっています。
産婦人科医は忙殺され、つまらないミスを犯してしまったり、逆に、がんばった挙句に結果が悪く(つまり赤ちゃんの状態が悪く)裁判になったりして、肉体的にも精神的にも疲弊していきます。
そんな状況に耐えられなくなり、当院でも産婦人科医は退職していきます。
そして悪循環は転げ落ちる雪玉のように膨隆し続けるのでしょう。
もし、今、親しい友人や家族が医師になり、産婦人科を専攻しようとしたら、私は止めると思います。
善意ある産婦人科医が、安心して新しい命の誕生の場に居合わせることができるような体制が、一日も早くつくられることを切に祈ります。
投稿: 一新生児科医 | 2007年2月 3日 (土) 12時08分
先生、お疲れ様です。
来週はNHK相手の公判ですね。
目が回るくらい、お忙しくされていることと思います。
体調は如何ですか。
医事紛争乱発の時代を迎え、
今後、報道被害者となる医者は増えるでしょう。
先生の名誉毀損訴訟は、医者の報道被害者たちの道標になると思います。
先生、どうか頑張って下さい。
先生が正当な勝訴を勝ち取ることと、
その判例が報道被害者の名誉回復と、報道被害の根絶につながることを
祈ってやみません。
投稿: なな | 2007年2月 3日 (土) 20時24分
harutyanさん
コメントありがとうございました。
長野県が田中知事の時に医療に理解があり、長野こども病院は大赤字でも全国区の病院になりました。小児病院は全世界的に赤字です。欧米のように寄付という制度が当たり前にあったり、子ども病院の宝くじなどでこの赤字を埋めたりしています。
これに対して千葉県知事の堂本さんは、通常女性の政治家であれば、医療の充実をはかるところ、こども病院も他の病院と十派一からげにして、統廃合しようとしました。これに対して重症な小児疾患(私の専門だった、複雑心奇形の患者さんなど)のおかあさん達が大反対。皆さん子どもが少しでも負担がないように、子ども病院の側に引越しまでしていたのです。あやうく統廃合をまぬがれましたが、赤字があたりまえの小児病院の縮小をはかるような政策にでるのであれば、住民はたちあがるべきです。
「よろしければわたしたちのHPに先生のブログのリンクを晴らせていただきたく、メールしました。
」→もちろん了解です。
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月 3日 (土) 22時42分
新生児科医先生コメントありがとうございました。
私も新生児に対する手術に携ってきたものとして、産婦人科、新生児科、小児科の先生方は同士だと思っております。欧米では、小児科医に対する評価が大変高く、尊敬されていますが、日本はどうでしょう。マスコミに登場するおしゃべりな外科医が優秀だと一般人は勘違いしています。(他の科の医師でも一般人と同じで勘違いしている人もいますが。)
Love is the greatest of all.という曲を知っていますか。ホイットニー・ヒューストンが1985-6年ごろ大ヒットさせた曲ですが、私が高校生の時(1980年頃の)ジョージ・ベンソンがオリジナルで歌っていました。この曲は、未来に我々を導いてくれるのは子どもの賛歌です。その子ども達人生を大きく左右するのが、産科、小児科の先生です。
私も先天性心疾患をもって誕生しましたので、小児科の先生にはお世話になっています。「傍聴記」で出てくる全前置胎盤のタクシー運転手から帝王切開で生まれた子も大きな夢を達成しています。産科の先生、新生児家の先生がいなければ、その夢も達成されなかった。
産科、新生児科の先生方。絶対に勝利しましょう。
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月 3日 (土) 23時02分
なな先生コメントありがとうございます。
医師としての名誉に対する意識レベルが高く、報道被害について詳しい先生ならではの配慮をいただき恐縮しております。
NHKに対して本人訴訟を提訴して勝訴した人が過去にどれだけいたか分かりません。いたとしても、極めてまれなことでしょう。
2月7日の私自身が被告証人に対する尋問は、今後の試金石となりますので、板張ります。
読者で、時間がある方は是非、傍聴をお願いします。
原告からの尋問第一弾-NHK社会部担当部長(当時警視庁キャップ)
期日:2006年2月7日13時30分~15時30分
場所:東京地裁 626号法廷 (民事第50部)
尋問:NHK社会部担当部長(当時警視庁キャップ)へのNHKの社内弁護士からの主尋問および佐藤からの反対尋問と主尋問。佐藤本人への裁判所からの尋問。
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_6e92.html#comments
参照してください。
(閲覧数が少ない記事なので、あまり期待はしていませんが・・・)
投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月 3日 (土) 23時13分
前回は、はじめましてのご挨拶も忘れるほど、先生の傍聴レポート予告に心を動かされた、giga 改め kaeruと申します。
遅ればせながら、傍聴記ならびにその後の各記事を読ませていただきました。詳細かつ臨場感あふれる内容と、まさしく医療関連裁判に関わっておられる先生ならではの経験に基づく視点に、じっくりと考えさせられました。
また、本事件と直接関係はないものの、映画『それでもボクはやってない』をつい昨日見に行き、刑事裁判のあらましを知るとともに、ある種の危うさを感じてきたところです(非常に誠実なつくりの映画だと思いましたし、絶妙のタイミングでの公開に、監督の嗅覚の鋭さを感じました)。
前回のコメントには詳しく書きませんでしたが、私は比較的時間に自由がきき、本事件には何のしがらみもない、東北地方在住の医療従事者です。第1回公判の傍聴はかないませんでしたが、おそらく今後の公判にも足を運ぶことと思います(先生や第2回に公判傍聴に名乗りを上げておられるいのげ先生と違い、現在のところ福島地裁に通うことへの負担感は殆どありませんが、裁判傍聴経験はありません)。
これまで本事件に関してインターネット上に現れた様々な記事の主要なものには、目を通したつもりでいますが、自分なりの考えを公にしたことは殆どありません。しかし今後、公判傍聴のチャンスが訪れたならば、その内容やそれに対する考えを、公開したほうがいいと思える場面があるかもしれません。その場合、自分でブログを書くことは考えていないので、本事件を取り上げているブログのコメント欄や、m3の掲示板などを利用することになるでしょう(いきなり改名したのは、m3で使える投稿者名と一致させるためです・・・などといいつつ、実際にそのような場に取り上げる気になるかどうかはわかりませんが)。いずれ傍聴が叶った時に、まったく話についていけなかったなどという残念なことがないように、とりあえず今月末の第2回公判に備え、自分なりの『公判前整理』をしようと思っています。
最後に、つい先日『報道被害』という岩波新書の新刊を読みました。現在先生が抱えておられる状況がまさしくそれなのですね。先生の裁判の傍聴には残念ながら行けませんが、よい結果が得られますようお祈りいたしています。
長文失礼いたしました。
投稿: giga 改め kaeru | 2007年2月 4日 (日) 21時29分
kaeru先生コメントありがとうございました。
次回の公判日は、私は私自身の裁判があるからいけませんので、kaeru先生やいのげ先生にお願いしたいと思います。『傍聴記』を書くのと、『報告書』を書く目的は多少異なると思います。本ブログでは、今回の「傍聴記」以外にも「刑事裁判のあらまし」を知っていただきたいとう目的を含む「おはなし」をなるべく扱ってきました。皆様に興味をもって理解していただくには、「報告書」よりも「おはなし」が効果的だとおもっているからです。
「報道被害」の本も是非沢山読んでください。関連本は10や20どころではありません。単行本以外にも判例なども読んで見るとよいと思います。また、今回のブログ「「医者」と「記者」 MedicalとMedia-「医療と報道」 カウントダウン3」も参考にしていただけると思います。
投稿: 紫色の顔の友達を助けてたい | 2007年2月 5日 (月) 00時17分