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2007年2月12日 (月)

東京女子医大“マッチポンプ”事件-概要

 200728日、私は、学校法人東京女子医科大学と東間紘元泌尿器科教授を被告とする損害賠償等請求訴訟を東京地方裁判所に提起しました。

 本件、提訴に関するメディアからの報道も増えていない様子ですので、提訴当日にメディア側に連絡いたしました本件訴訟の概要を当ブログに掲載いたします。

概要

1 当事者

原告:当ブログ管理人

2001年3月1日東京女子医大で行われた心臓外科手術(「本件手術」)において人工心肺を操作していた医師。2002年6月28日業務上過失致死容疑で逮捕され、その後起訴されるが、東京地方裁判所刑事15部は、2005年11月30日、同人を無罪とする判決を出した。

被告:

学校法人東京女子医科大学(「東京女子医大」)

東間紘(本件手術当時、東京女子医大の泌尿器科教授)

2 事件名・係属部・事件番号:

       損害賠償等請求事件・東京地方裁判所民事11部、平成19年(ワ)第2740号

3 請求の原因(要旨)

(1) 内部報告書による名誉毀損

 被告東京女子医大は、本件手術に関連して、内部調査委員会(委員長:被告東間)を設置した。同委員会は、2001年10月3日、「故平栁明香殿死亡原因調査委員会調査報告」(「内部報告書」)を作成しその後公表したが、内部報告書は、患者が脳障害により死亡した原因は、人工心肺中に生じた脱血不良による脳循環不全にあり、その脱血不良が生じた原因は、術野からの吸引ポンプの回転数を、通常1分間に40回転のところ、原告が100回転以上に上げたままで人工心肺を作動させたことによる脱血回路内の圧上昇である」という誤まった事実を摘示した。すなわち、内部報告書は、専門性を有するべき医師である原告が、手術中の不適切な人工心肺の操作というミスにより本件患者を死亡させたと伝えるものであり、原告の名誉を毀損する。

 被告東京女子医大は、本件調査委員会を設置し、内部報告書を対外的に公表した主体であり、被告東間は、本件調査委員会の委員長として内部報告書を作成した責任者である。よって、被告らは、原告に生じた損害を、連帯して賠償する責任を負う。

 内部報告書によって原告が蒙った精神的苦痛に対する慰謝料は、それを原因として原告が逮捕、勾留、起訴されたことや、原告の心臓外科医としてのキャリアが著しく毀損させられたことなども踏まえるならば、金50,000,000円を下らない。

(2) 不当解雇による未払賃金の請求

 被告東京女子医大は、2002年8月15日、本件手術において、原告が人工心肺装置の操作を適切に行わず本件患者に重度の脳障害を生じさせて死に至らしめ、業務上過失致死罪にて逮捕、起訴されたこと等を理由として、原告を諭旨解雇した。

 しかし、原告が業務上過失致死罪を理由として逮捕、起訴されたこと自体は事実であるが、これは被告女子医大自身が、虚偽の内容を含む内部報告書を作成・公表した結果、捜査機関が捜査を誤って原告の逮捕、起訴に及んだからであって、そのことを根拠として被告女子医大が原告を諭旨解雇することは、いわゆるマッチポンプに他ならない。解雇には何ら理由がなく、当該解雇は無効である。

 これまでの未払賃金の額は、25,550,000円を下らない。

                                                            以上

(なお、メディアが報じた請求額は、上記の損害賠償請求に弁護料を可算した額です。概要の中にありましたが、省略いたしました。)

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コメント

「紫色の顔の友達を助けたい」先生、原告のお名前がアップされていますので、ネット上では消しておかれたほうがいいと思います。

投稿: やぶい | 2007年2月15日 (木) 09時15分

老婆心ながら、原告のお名前はネットでは消しておかれたほうがいいと思います。

投稿: やぶい | 2007年2月15日 (木) 09時44分

お久しぶりです。
影ながら応援しておりますので、頑張って下さい。
TBもさせていただきました。

投稿: Dr. I | 2007年2月17日 (土) 00時37分

はじめまして、おじゃまいたします。

医療紛争の解決については、将来的に第三者の専門機関が関わるという流れが出来つつあるように思います。ただ、残念なことに、女子医大の報告書や福島県の報告書などから、専門機関に対する一般人の信頼はマイナスからのスタートにならざるを得ないように思います。

専門家に対する信頼を取り戻す一歩として、先生の訴訟を応援させていただきます。

投稿: と | 2007年2月18日 (日) 14時18分

と先生コメント有難うございます。
 女子医大の報告書は、「泌尿器科医」「循環器内科医」「麻酔科医」の専門家でない人達によって作成されたところが、「大野病院事件」と全く違う所です。女子医大には、心臓麻酔の専門家が、3人、特に日本心臓麻酔学会の理事もいたのに、敢えて心臓麻酔が不得意な麻酔科医が委員になっていました。裁判では、このことが一般の人にわかるようにしたいと思います。現段階で、一般の人が「医師ならどんな科の医師でも専門家である」と考えるのか、「心臓外科医でなければ、専門家ではない」と考えているのか知りませんが、当然後者であると考えるようになってもらいたいと思います。
 この内部報告書を否定したのが、第三者の専門家中の専門家である、東大、慶応、東京医科歯科、埼玉医大の教授達で、その中には、心臓血管外科学会の理事長、人工臓器学会の理事長が含まれていました。

投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2007年2月18日 (日) 23時43分

m3.comで初めて知りました。何も出来ませんがもしOKでしたら私のブログにもアンカー貼ってこのHPに行くようにしたいのですが。ゴルフの話題ばっかりのブログで恐縮なんですが、一度見てください。MRや地元のDrが閲覧するようなので。がんばってください。

投稿: マルちゃん | 2007年2月19日 (月) 11時19分

おじゃま致します。
私は今迄自分が得た情報から自分なりに判断して、こちらのサイトで主張されていることには99%共感していることをまずお伝えします。
その上で、今回の内部報告書に限らず、「専門家でない人達によって作成された」資料と、「専門家である」人が作成した資料、「専門家中の専門家」の主張する事実、の違いを、専門知識をもたない「一般の人」に理解させるのは困難ではないかと感じます。専門的な内容であるその情報が正しい(或いは間違っている)ということをシロウトの持つ知識で確実に判断することはむずかしいのではないかと思うのです。
もちろん、情報を意図的に歪曲した女子医大の行為はこのような事実から不当だという主張は一般人にも当否の判断可能な問題だと思います。

投稿: Themis | 2007年2月19日 (月) 14時10分

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