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2008年12月12日 (金)

100万円基準を500万円基準にー名誉毀損裁判 損害賠償額ー

今回の集英社と毎日新聞記者5人を被告として名誉毀損裁判で勝訴いたしましたが、その損害賠償金額が80万円と低い金額だったことに関して、m3.comほかのネット上で論じられています。

これは、以前から、裁判所の方でも認識されていたことで、専門雑誌(ジュリストなど)でも論文が発表されていました。これらを利用して、一般論や事例を用いて本件ではどの程度なのかを検討して準備書面として提出したのですが、判決にはあまり反映されなかったようです。議論と盛り上げるきっかけにもなると思いますので、以前フジテレビ訴訟での準備書面に手を加えたブログ「日本の名誉毀損損害賠償額算定学」http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-7046.html

に加えて今回の訴訟での準備書面における主張を掲載します。

特に、名誉毀損裁判の経験がある法曹界の方々からご意見をいただければと思います。

第5 損害賠償額について

原告は訴状において1000万円の損害賠償金と民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。以下、損害賠償額について主張する。

1.名誉毀損裁判における慰謝料額の検討

 我が国において,名誉毀損をはじめ人格権侵害の損害賠償額,特に慰謝料額については,顕著に低額であることが指摘されてから久しい。現在から20年以上前に,「北方ジャーナル事件」最高裁大法廷1986年6月11日判決(民集40巻4号872頁,判例時報1193頁)において大橋裁判官は補足意見の結びに「わが国において名誉毀損裁判に対する損害賠償は,それが認容される場合においても,しばしば名目的な低額に失するとの非難を受けているのが実情と考えられるのであるが,これが本来表現の自由の保障の範囲外ともいうべき言論の横行を許す結果となっているのであって,この点は官権者の深く思いを致すべきところと」と判示されている。

 稀な例外を除けば,せいぜい数十万円から100万円程度にとどまってきた名誉毀損に対する従来の損害賠償の「相場」は,近時の高度情報化した我が国の社会において,情報,名誉,信用等に対する価値が増大していることに対応していなかったため,その妥当性が再検討されるべきであった。実際に,平成13年司法制度改革審議会の最終意見で,「損害賠償額の認定は低すぎるとの批判があり,必要な検討が望まれる」ことが指摘され,マスメディアによる名誉毀損を中心とした損害額の算定についての裁判官による研究会が活発に行われた。その結果,名誉毀損での高額化の提案が相次いでなされた。

 例えば,東京地方裁判所損害賠償訴訟研究会「マスメディアによる名誉毀損訴訟の研究と提言」(ジュリスト1209号63頁)は,基本額として400万円から500万円程度を提案し,司法研究所「損倍賠償請求訴訟における損害額の算定」(判例タイムズ1070号4頁)も高額化を提起するとともに,慰謝料額の定型化の算定基準も示された。また,元裁判官の塩崎勤弁護士による「名誉毀損による損害額の算定について」では,一般的な平均基準額として500万円程度が示され,井上繁規東京高等裁判所判事による「名誉毀損による慰謝料算定の定型化及び定額化の試論」(判例タイムズ1070号14頁)では慰謝料算定の定型化及び定額化の算定基準が提示された。

2.過去の判例の分析的損害額算定と平成13年以前の裁判例

 一般的な平均基準額として500万円が示されたとはいえ,名誉毀損による損害賠償事件における算定は,裁判所が各事件における事情を斟酌し,その自由な心証に委ねられてきたことは,確立した判例が示してきた。損害額の算定に,考慮されるべき事情は多種多様で,様々な要素が考慮された結果として,最終的な算定に至るものであり,一般的かつ汎用性のある損害賠償の基準・標準を,過去の判例の算定額から単純に導きだすことは困難である。しかしながら,本件と同様の事例に限定して抽出した分析結果は、本件における慰謝料算定を考えるに当たり意味がある。

 例えば,前述の東京地方裁判所損害賠償訴訟研究会「マスメディアによる名誉毀損訴訟の研究と提言」「5.損害額算定の裁判例の分析のまとめ」ジュリスト1209号72頁では,本件同様の事例,

   名誉毀損行為の伝播性が全国的なものであった事例

   被毀損者が社会的信用のある者などの著名性を有していたもの

   何らかの減額要因(報道の正当性,断定的な表現でないこと,被害者側の落ち度,謝罪広告の請求を認容すること等)が積極的には認定されていない事例

以上の①②③に限定し抽出した7事例が分析されている。これらの修正単純平均額は485万7142円で,中間値(メジアン)は300万円であった。

 本件をこれと照らし合わせると,①日本有数の出版社である被告が出版したもので、累計発行部数28000冊(乙第19号証)、全国紙特別な大きな文字を使用して広告した(乙第2号証の1、乙第2号証の2)ことから推測できる閲覧者数は莫大で、伝播性が全国的であることはあきらかであり、②被毀損者が一般に社会的信用のある医師であり,③何らかの減額要因がない事例であり,この東京地方裁判所損害賠償訴訟研究会の論文における「限定して抽出された事例」の範疇に含まれるものである。

3.平成13年以後の主な名誉毀損裁判の損害額について

 平成13年に活発発表された裁判官らの論文の研究対象になった名誉毀損訴訟判例の後も,名誉毀損裁判の認容損害額は高額化し,研究対象となった判例に比較しても総体として高額となっている。以下に主な判例の「認容損害額」「被毀損者」「事件の内容」等を列挙する。

   1650万円(被毀損者 市長)「鎌倉市長がビルの所有者,政治団体,任意団体の代表者の垂れ幕で名誉を毀損された事件」 横浜地方裁判所 2001年10月11日判決(判例タイムズ1109号186頁)

   920万円(被毀損者 大学教授 *)「私立大学の教授が発掘調査された遺跡から発見した石器の捏造に関連した旨等を摘示した週刊誌記事の事件」最高裁判所2004年7月15日第一小法廷判決(別冊ジュリストNo.179「メディア判例百選」144頁),福岡高等裁判所 2002年2月23日判決(判例タイムズ1149号224頁) (* 本件の原告は,被毀損者の遺族3人である)

   600万円(被毀損者 プロ野球選手)「プロ野球選手のトレーニングに関する週刊誌記事の事件」東京高等裁判所 2001年12月26日判決(判例時報 1778号78頁,判例タイムズ1092号100頁)

   600万円(被毀損者 プロ野球選手)「プロ野球選手が野球賭博に関与したとの主旨の週刊誌記事の事件」東京高等裁判所 2002年3月28日判決(判例時報1778号79頁)。

   550万円および440万円(被毀損者 医療法人理事長および医療法人)「医療法人の職員4人が死亡した事故と保険金の関係等の写真週刊誌記事の事件」熊本地方裁判所 2002年12月27日判決

   550万円および110万円被毀損者 電気通信事業会社社長および会社)「電気通信事業会社社長が原告会社の子会社の株を操作した旨の週刊誌記事とファミリー企業がソープランドを買収した旨の週刊誌記事の事件」東京地方裁判所 2003年7月25日(判例タイムズ1156号185頁)

   550万円(被毀損者 テレビ番組制作会社)「テレビ番組制作会社に関する裏金要求疑惑や窃盗疑惑などの週刊誌記事の事件」 東京地方裁判所 2005年4月19日判決 (判例時報1905号108頁)

   500万円および500万円((被毀損者 建築家および建築家名建築都市設計事務所) 「橋の設計等に関与した建築家を誹謗した週刊誌の記事等の事件」(東京地方裁判所 2001年10月22日判決(判例時報1793号103頁)

   500万円(被毀損者 国会議員)民主党所属の国会議員が,賛成派議員と郵政民営化法案通過の打ち上げに参加していた旨を摘示した週刊誌記事の事件」東京地方裁判所民事第34部 2007年1月17日判決

   500万円(被毀損者 国会議員)「地下鉄建設工事に関して利益を得た旨の雑誌記事の事件」京都地方裁判所2002年6月25日判決(判例時報1799号135頁)

   500万円(被毀損者 テレビ放送局社員)「放送局の社員が自宅マンションの騒音をめぐる紛争につき建設省を通じて施工業者に圧力を掛けた等の言動を内容とした写真週刊誌記事の事件」東京地方裁判所 2001年12月6日判決(判例時報1801号83頁)

   440万円(被毀損者 医療法人) 医療法人の経営する病院に勤務する医師が無断アルバイトを理由に退職したにもかかわらず,医療過誤の事実を患者側に伝えて解雇されたなどと週刊誌の取材やテレビで発言した場合,病院の社会的評価を低下させたとして,医療法人の医師に対する損害賠償請求が認容された事例」 横浜地方裁判所 2004年8月4日判決(判例時報1875号119頁)

参照:「検察官の異議申し立ては棄却! 第5回控訴審速報 自ら報告」

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/5_de20.html

   440万円(被毀損者 評論家)「書籍やインターネット上で評論家の名誉を毀損する事実を摘示した事件」 東京地方裁判所 2001年12月25日判決

   330万円(被毀損者 弁護士)「新弁護士会館に飾られる裸婦画をめぐる女性弁護士に関連した週刊誌記事の事件」 京都地方裁判所 2005年10月18日判決(判例時報1916号122頁)

   300万円(被毀損者 金融会社)「消費者金融会社の企業経営を批判する月刊誌記事の事件」東京地裁 2002年7月12日判決(判例時報1796号102頁)

   300万円(被毀損者 弁護士)「弁護士に関する単行本のルポ中の記述の事件」東京地方裁判所 2003年12月17日判決(判例タイムズ 1176号234頁)

4.本件書籍の損害額算定における考慮要素の分析

  名誉毀損の損害額算定にあたって考慮される増額要素には様々なものがあるが,以下項目別に本件で考慮されるべき増額要素について論じる。

(1)事実流布の範囲、情報伝播力

 本件書籍は、本邦最大級の出版社である被告による出版で、累計発行部数28000冊(乙第19号証)、朝日新聞(乙第2号証の1)日本経済新聞(乙第2号証の2)といった全国紙に通常の新書の宣伝よりも特別な大きな文字を使用して印象が残るように広告した。

本件書籍は、おそらく全国津々浦々の書店で発売されたり、全国にある一般図書館にも蔵書とされたりしたはずである。仮に、発行部数が28000冊だとしても、本件書籍購入者の他、図書館からの貸し出し、パーソナルな貸し借り、古本として本件書籍を閲覧したものは、その何倍にもなる可能性がある上、現在でも増加しつつある。

(2)二次的伝播への影響

 近年,爆発的な広がりを見せて発展したウエッブサイトによる二次的伝播による損害の拡大も無視できない。ウエッブサイトが存在しない時代の書籍の内容に関する情報の二次的伝播は、そのほとんどがパーソナルコミュニケーションに限られていた。しかしながら、現在の高度に発達したホームページやブログの伝播力は無視できない。本件書籍を閲覧した読者が自らのホームページやブログに本件書籍の内容や引用を用いた場合、そのウエッブサイトの閲覧者に対しても原告の社会的信用を低下させる情報が流布されることになる。さらに、その閲覧者が自分のホームページやウエッブサイトに書き込みを行うと、三次的伝播ないし高次的伝播と,次々とねずみ算式に波及する可能性がある。そうなると,仮に原ウエッブサイト記事が後に削除されたとしても,名誉毀損の被害拡大を抑制することは不可能である。

 本件書籍を直接閲覧したり,これに関するウエッブサイトを閲覧したりした者が,最初に抱いた印象は簡単に消えるものではない。それどころか,最初に抱いた印象を基準にして判断し,一審公判廷で無罪とされた方が間違っているのではないかとの不信感を持つ者が少なからず存在するはずである。万が一,これらのウエッブサイトを把握し得ることが可能となって、その全て削除され,さらに後に繰り返し原告が無罪であることが別のメディアによって報道されるようなことがあったとしても,最初に抱いた印象は簡単に消えるどころか永遠と残存する可能性も高い。

(3)精神的損害・無形的損害

 被毀損者の「名誉を毀損された者にしか分からぬ痛み」は,どんなに甚大であろうとも,第三者が理解することは困難である。原告は,小学生のころから医師それも心臓外科医を目指し,大学医学部で6年間,その直後の医師免許取得から本件書籍発売までの18年以上の年月を併せて継続的に20年以上もの間医学を学び,心臓外科学を研鑽し心外科診療に従事してきた。本件書籍出版後も心臓外科医として患者の診療を行ってきた。

これに対して,科学的素養も有さない,何の医学知識もない,充分な取材も行わなかった被告の認識すなわち取材の努力もしない記者の誤った認識によって,いとも簡単にあたかも有罪であるかの印象が全国的に流布されたのであるから、たとえ一審無罪判決が言い渡された現在でもその損害は甚大であり、原告の社会的信用の回復は容易ではない。その精神的苦痛は極めて大きい。

(4)名誉毀損の内容・表現方法

 本件書籍「第一章 東京女子医大病院事件」は、書籍の最初に扱われた事例で、81頁にわたる記載がある。書籍における配置、頁数からして最も印象に残る章である

 さらに、内容や表現方法は、「途中で、『血液が回ってない』と医師の怒鳴り声が響いた。人工心肺装置の操作を担当した医師がポンプの回転数を上げすぎ、装置が故障して、動かなくなってしまったのである。(乙第1号証20頁)」と実際にはありもしない「台詞」を創作したり、原告が訴状で指摘した部分に関しては、全般的に誤っている事柄を断定的に述べたりしている。

また、自らは全く医学知識が欠如しているにもかかわらず、誤った情報を用いて「名門女子医大で心臓手術を手がける専門医たちの知識レベルは、どうなっていたのだろうか。」と原告を罵しるなど悪質である。さらに、「やぶ医者」というような下品な表現を用いたり、「初歩的ミス」「単純ミスというより技術不足だ」等原告の心臓外科としての背景や知識を知りもしないのに、誤った事柄について断定的に述べたりしている。

以上、内容と表現について考慮しても、損害額の算定については増額されるべきである。

(5)加害行為の動機・目的

 本件で対象になっている記述についての、加害行為の動機、目的は明らかではない。しかしながら、「やぶ医者」「初歩的ミス」「技術不足」などの文言が用いられていることから推測すれば、原告個人を特に吊るし上げようとしたと考えられる。

(6)取材方法の相当性

 被告らの乙第12号証、乙第13号証「陳述書」は、「平成20年1月28日付け」で、2001年12月29日からの取材の経過が陳述されているが、前述の「第4 取材メモの不提出について」で述べたように取材メモ等の証拠が添付されていない。このことは、被告にとって有利な部分の取材メモの一部を抜粋したり、被告にとって有利な記憶だけを用いたりすることにより陳述書を作成したと推測される。

乙第12号証、乙第13号証それぞれの取材の日時が明確に記載されているわけではない。平成14年6月までは、それぞれの取材について具体的な記載があるが、本件争点になっている逮捕後の取材については、乙第12号証8頁に「その後も、私や取材班のメンバーは、平成17年12月ごろまで、佐藤氏や瀬尾医師の刑事事件の公判を随時傍聴するなどして、本件医療事故に関する情報収集を継続的に行いました。」とあるだけで、具体的に何を取材したかの記載が全くない。

一方、乙第15号証「陳述書」は平成20年3月4日付けで、裁判長からも、「『3学会報告書』発表後から本件書籍が出版されるまでの取材について明確にする」旨の要請があった後の陳述書である。しかし、この間の取材についての具体的な取材については、何も記載されていない。

また、この期間に被告ら自らが執筆した新聞記事(甲第16号証)では、本件手術で使用された人工心肺装置自体に重大な欠陥があることを認識しながら、そのことに対して全く取材をしていなのであれば、本件書籍の執筆において怠慢な取材態度であったといえる。

(7)被害者の年齢・職業・経歴・社会的地位の高さ

 名誉毀損被害にあった原告は,満40歳をこえて、所謂働き盛りの年代であった。医学博士の学位と心臓血管外科専門医、日本外科学会認定医,専門医、胸部外科認定医を有する現役の心臓外科医であり,その外来診療状況は病院内の案内やパンフレットにとどまらず,「綾瀬循環器病院ホームページ(http://www.ayaseheart.or.jp/index.php)」)にも公開されていた。

 これに加え,上記「3.平成13年以後の主な名誉毀損裁判の損害額について」⑪の事案では,特に社会的にその職業が公開されることもない放送局の一社員に対してですら500万円の慰謝料が認容されたり,同⑤の事案では,同じ医師の資格をもつ医療法人理事長個人に対して550万円の慰謝料が認容されたりした判例があり、賠償額の算定にはこれらを鑑みる必要がある。

(8)被害者が被った営業活動,社会生活上の不利益

 前述の通り,原告は,現役の医師として診療を行っていた。診療に当たっては,本件書籍した患者や患者家族が「原告に過失があったために,事故が生じたのではないか。」との心持ちで,原告の診療を受けていたのではないかという不安が生じた。また,外来を予約したのに受診することなかった患者は,上記のような理由から原告の外来診療を拒否し始めたのではないだろうかという不安を持たざるを得なかった。

 このように,著しい営業活動,社会生活上の不利益を被ったのである。

(9)名誉毀損事実の深刻さ

 近年の名誉毀損訴訟における損害賠償額の高額化の先駆けとなった上記「3.平成13年以後の主な名誉毀損裁判の損害額について」③の事案は,著名なプロ野球選手が再起をかけてのシアトルでのトレーニング中に,ストリップパブに通い白人ダンサーを相手に遊びに興じていた等の記事が問題となったものであった。かかる事案は,プロ野球選手にとっての専門性が直接問われる野球でのパフォーマンスとは関わりがないものであったにもかかわらず,600万円の損害賠償が認められた(なお,一審判決は1000万円の損害賠償を認容した。)。

 原告は,心臓外科医になるために6年間医学部に通い,その後は女子医大の心研に入局し,寝食を惜しんで,骨身を削って心臓外科医としての職務や研究に没頭し,国際学会でもその成果を発表し,医学博士の学位や認定医を取得してきた。原告が人生をかけて築いてきた職業的専門性を,本件書籍は十分な取材をせずに簡単に否定したものであり,原告が本件書籍送によって被った精神的苦痛は多大で極めて深刻なものである。

(10)事後的な名誉回復措置の有無

 被告は,これまで一切の事後的な名誉回復措置をとっていない。

2001年12月29日に被告らの属する毎日新聞社が本件事件を報じたのと同時に読売新聞に記事を書いた同社のW.R.記者は、一審判決後に原告に対して、「『内部報告書』を鵜呑みにして、記事を書いてしまったことを謝罪します。もう一度あの『内部報告書』を見直さなくてはならないと考えています。これまでの事件の経過とともに、これが誤っていることを御教示いただきたいので、取材させて下さい。」旨、丁寧に頭を下げて謝罪し、真実についての取材を申し込んだため、原告はこれを受けた。

このような真摯で誠実な態度の記者が存在する一方で、被告は、取材経過に関して「入稿スケジュールを考慮すると3学会報告書を本件書籍に反映することは困難」「3学会報告書の記者向けの積極的発表ななかった」「マスコミ向けのものではない」「3学会報告書を入手したのは、平成15年8月25日の期日からしばらくたってから」旨(乙第15号証)など、見苦しい言い訳に終始している。

また、上記にも述べたように、驚くべきことに、未だに「3学会報告書の内容的にも内部報告書の結論に疑問を抱いたり、ましてそれが誤りであったと判断することも難しかった」等と嘯いている。上記にも述べたように、「3学会報告書」には、「東京女子医大で起こった事故は本来陰圧であるはずの静脈貯血槽が急激に陽圧になったためであり、その原因は吸引回路の回転数が非常に高かったためではなく(甲8号証25頁)」と「内部報告書」の結論を完全に否定している。

このように現在にいたっても不誠実な姿勢を崩さない被告態度も慰謝料の算定に考慮されるべきである。

.小括

  以上述べてきたことを統合すれば,本件書籍が原告の名誉を毀損したことによる損害額は、1000万円と評価されるのが相当であり、被告らは原告に対し、連帯して金1000万円、及びこれに対する2003年12月23日支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

以 上

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コメント

勝訴おめでとうございます。
毎日新聞の医療叩きは病的なもので、控訴される可能性がありますが、
どうか気丈であってほしいものです。

投稿: 某173 | 2008年12月13日 (土) 17時54分

某173さんコメントありがとうございました。

平成20年12月10日に 控訴を提起し、かつ、判決に喪続く強制執行の停止を申し立てました。

投稿: 紫色の顔の友達を助けたい | 2008年12月14日 (日) 20時43分

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