« リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために | トップページ | 連載第二回 JAMIC JOURNAL 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」 »

2008年12月 2日 (火)

連載第一回 JAMIC JOURNAL 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」

JAMIC JOURNALに2008年10月号から連載しています。

同誌は、無料情報誌ですので、最新刊以前のものであれば、問題ないと思いますので、ブログに転記します。

「リヴァイアサンとの闘争

―正当な治療行為で冤罪にならないために」

AMIC JOURNALに2008年10月号(32ページ)

第1回  冤罪事件経験者からの伝言

「虚偽の報告書」で犯罪者扱い 

私が「治療行為」に関わった東京女子医科大学付属病院での心臓手術後に、患者さんが亡くなりました。遺族の要請があり、調査を行った大学側は、明らかに科学的・医学的事実に反する報告書を作成し、私に責任を押し付けてきました。民事紛争の話し合い開始後、遺族がこの報告書をメディアに暴露したため大騒ぎとなり、さらに手術に関わった私と4人の医師が「業務上過失致死罪」で告訴(最終的には「被害届け」提出)され、警察は捜査を開始しました。その後、私が逮捕・勾留・起訴されました。結局、裁判では無罪判決を言い渡され冤罪は晴れました(検察側が控訴し、現在係属中)。

警察・検察の作文が署名・押印で“証拠の女王”に 

富山県で発生した「無実の強姦事件」のように、悪名高き「自白調書」を基にした多数の冤罪事件が起こっています。警察が、論理的証拠もない最初の段階で「こいつが犯人だ」という心証を得ると、捜査官の努力方向は「真相の解明」ではなく、「有罪の立証」に向かいます。女子医大事件でも、任意捜査が進むにつれて刑事たちは「報告書」が誤っていることに気づいた様子でしたが、私を犯人扱いしました。「お前が一生懸命に心臓外科をやっているのは知っている。心臓の手術をたくさんしていれば、患者が死ぬ事だってあるだろう。一人くらい死なせたってなんだ。心臓外科医にとっては勲章だ。今回は『御免なさい』しちゃって、また一生懸命やればいいだろう」。警察は、話をしたこともなければ、同意したこともない「供述調書」という名の「警察製作文」を勝手に事前作成してその末尾に署名・押印(指印)させようとします。こんなものは、署名・押印がなければ単なる紙切れと同じですが、署名・押印した瞬間に裁判の“証拠の女王”に戴冠することになります。

「取調室の心理」 

公務員である司法警察員(警察の捜査官:刑事)と検察官の業務は、人を法律上の犯罪者につくり上げることです。彼らは日常的に「職業的犯罪者」や「非合法の世界で生きる人」を相手にしていますから、ごく普通の市民である臨床現場の医師や若い看護師等の医療従事者の取調べで「供述調書」を作成することは「凄く楽だ」と嘯(うそぶ)いています。「警察の応接間」と彼らが呼ぶ狭い「取調室」のテーブル奥側に、一人でパイプ椅子に座らされ、唯一の出口であるドアの前に立ちふさがる北京五輪柔道100kg超級金メダリストの石井慧選手や元ボクシング世界チャンピオンのガッツ石松さんに似た複数の刑事に囲まれて、強い口調で10時間以上も叱責されて、毎日毎日、深夜になっても解放されない状況を想像してください。結局、医療従事者は納得いかない調書に署名・押印して帰宅するのです。ちなみに最高裁判所は、「1日20時間一睡もさせずに取り調べても、自白の強要にあたらない」と判示したことがあります。

新連載の目的「冤罪にならないために」 

今回から6回にわたる連載では、私が開設しているブログ「『紫色の顔の友達を助けたい』東京女子医大、警察、検察、マスメディアの失当」において、カテゴリー「刑事事件資料」で「⑩冤罪にならないための―任意事情聴取注意点―」   (http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_bfc4.html)に書いたことをわかり易く説明しようと思います。正当な治療行為が行われたにもかかわらず、医療死亡事故が発生したことに関連して医師が「業務上過失致死罪」を犯した疑いをかけられた場合を想定し、警察・検察での「取り調べ」「事情聴取」「供述調書作成」に関する注意点を伝え、「冤罪」を回避することを目的としています。市民の手から財産や自由、場合によっては生命をも奪うこともある国家権力。その暴力装置といえる警察・検察は、犯罪者をつくり出すプロフェッションです。そんな現代の「リヴァイアサン」と闘争しなくてはならなくなった「一市民である医師」のための「戦略」を綴っていきたいと思っています。

|

« リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために | トップページ | 連載第二回 JAMIC JOURNAL 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」 »

JAMIC JOURNAL 連載 「リヴァイアサンとの闘争」」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/87351/25838878

この記事へのトラックバック一覧です: 連載第一回 JAMIC JOURNAL 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」:

« リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために | トップページ | 連載第二回 JAMIC JOURNAL 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」 »