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2009年2月26日 (木)

第6回 (final ) 弁護士を直ぐに雇い、供述調書に署名するな

JAMIC JOURNAL 2009年2月号

"リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために"

第6回連載されました。

006  弁護士を直ぐに雇い、供述調書に署名するな

現実直視と弁護士依頼 私は、参考人や被疑者になった多くの医師と関わってきました。人生最大のピンチに対峙せず「任意取調べを完全拒否した」医師、現実逃避して「山に籠った」医師がいました。困ったことに、彼らは弁護士を雇うことが「社会正義に反する行為」と勘違いしていました。リヴァイアサンが、炎を噴射する先制攻撃は「弁護士との分断」です。「やましいことがあるから雇うんだろ」「所詮、お前から金をとるためにやって来る人間だ」等と言われます。逮捕歴10回の先輩房長が言いました。「佐藤さん。弁護士の言うこと90%本当、警察検察の言うこと90%嘘。これ本当。」国家権力の行使から、時には世論の風向きと対立してでもあなた個人を守れるのは、憲法に一つだけ書かれた民間の職業―弁護士しかいません。権力にあらがう人々の弁護活動に情熱を注ぐ法律家諸兄の警句は一致しています。「調書に署名するな」

基本①:「調書に署名するな」 捜査官があなたの言う通りに全ての訂正に応じた場合のみ、例外的に調書に署名しましょう。それ以外の署名は絶対ダメ。捜査官がプリントアウトした“作文”を「自分の調書」に書き直させることは、並大抵ではありません。訂正要求に対して別の作文を書いて「これでもいいだろ」と折衷案を提案してきます。しかし、右顧左眄することなく一切拒否する図太さが必要です。調書作成の世界では「正⇔反⇒合」の弁証法は誤りです。アウフヘーベンすることなく「正⇔反⇒反」のみが正しいやり方です。権力におもねるのは楽ですが、ここで弁護士の言葉を思い出して奮い立つ。勿論、署名は義務ではありません。「署名しないこと」は被疑者が有する「唯一の武器」。訂正箇所は100以上あっても全て要求すること。いっぺんに直そうとするとモレやヌケが出てきてしまうので、ひとつずつ根気よく直すきめ細かさと忍耐力が必要です。相手が応じないなら即「署名しない」。仮に逮捕されるとブラフで揺すぶり「調書がなきゃ裁判終わるまで釈放されない」「調書がないと裁判官はお前を信用しない」と脅しますが、そんなことはない。供述調書の代わりに、弁護人があなたの言い分を書き取って「陳述書」を作成することができます。調書は0通でもよいのです。

基本②:「評価はするな、話すな」 実は、「調書に署名しない」というアドバイスを弁護士さんから耳にタコができるくらい散々伝授されたにもかかわらず、逮捕された後に、「事実」について不本意な調書に署名をしてしまった日がありました。それほど、国家権力には爆発的破壊力が備わっているのです。午前2時前、留置所の房に戻り悔しくて、一睡も出来ませんでした。その反省を現在ここに綴っています。「事実」に関する調書が終わると、「評価」に関する事情聴取に入ります。「何が悪かったのか」「どうすればよかったのか」と過失の存在が前提であるような話をしようとします。この質問には、答えることすらしてはいけません。良い悪いの価値判断はいりません。「どうであったか」の「過去の事実確定」で供述は終了。評価や結論は捜査官なりにやるべきもので、協力する必要はありません。私は最後の砦を守りました。

基本③:苦しかったら弁護士さんを悪者に 「評価に関することは、弁護士から堅く堅く『話してはならない』と言われています。」弁護士への盲目的服従宣言しての部分完全黙秘をします。最初にこの態度を明確に宣言すると、捜査官は以後何も聞いてきませんでした。「弁護士を悪者にしてください。これが我々の役割ですよ。そのために弁護士を雇ったと思ってください。苦しいとき、黙秘するときは是非利用してください。」不本意な調書に署名して落胆した私が、その後の取調べで楽になったのはこんな言葉でした。

おわりに 連載で首尾一貫して伝えてきたことです。「知らないことは知らない、言えないことは言わない。相手を分からせなくてよい、繰り返し同じ答えでよい。取り調べで評価の話はしない、供述調書には署名しない。」「とにかく供述調書には署名しない。」

過去の連載記事

第一回  冤罪事件経験者からの伝言

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/jamic-journal-2.html

第二回  医療事故冤罪-業務上過失致死罪における過失の有無

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/jamic-journal-0.html

第三回 事情聴取-「取調べ」は通常の会話ではない」

第四回 「リヴァイアサンとの闘争―正当な治療行為で冤罪にならないために」

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-c6ad.html

第五回 供述調書作成-「自分の調書」を書かせる

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-9ad3.html

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