1.「ルポ 医療事故」と「医療事故がとまらない」の比較
この書籍では、本件事件が紹介されています。
私は、名誉毀損裁判で、「医療事故がとまらない」という書籍を執筆した「毎日新聞医療問題取材班」の記者を訴えて一審勝訴しました。法廷で、E.M.という記者は「私の取材の原点は、被害者の視点です。」と語っていますが、それでは物語になってしまいます。また法廷で明らかになったことは、事件の報道以前に「筋読み」とか「ねらい」を創ってこれに沿った取材活動をしているという点です。職業的使命感や表面的な道徳的正義感が、真実の見極めよりも先に駆け出しているからです。熱意や正義感をhttp://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-c6ad.html動機づけるものは基本的に主観的思い込みであって、客観的、合理的判断ではありません。「思い込み」には、客観的判断とのズレが必ず生じます。しかし、客観的判断で、感情の独走を抑制できるほど人は器用ではありません。
これに対して、本件書籍は、一段高いところから全体を見回して執筆に取り掛かっているように思えます。比較的抑えた語り口、公正な視線が印象的です。
「おわりに・・・(医療版事故調査委員会)設置は、今後の日本の医療に大きな影響を及ぼすことは間違えありません。現実を踏まえた、冷静な議論が必要です。そこで私は、過去の医療事故調査を検証してみようと考えました。医療事故被害者の遺族や、事故にかかわった医療者、事故調査を担当した医師たちの話にじっくり耳を傾けることで、未来の制度づくりのヒントが得られるのではないかと思ったからです。」この姿勢でこの書籍が書かれたことが理解できます
2.第4章 第4章 否定された内部調査報告書 東京女子医科大学病院 心臓手術事故」
この章が、本件事件にあたります。項目は
・ 無罪判決
・ 内部告発
・ 事故を認めた調査委員会
・ 医師2人を逮捕裁判外紛争処理の試み
この後からが、本章の肝です。
・ 専門家を排除した原因調査
⇒非科学的で杜撰な検証と報告書作成の状況
専門家の意見
E 教授 「科学的常識では考えられない」
K教授 「操作担当者のミスとするためのこじつけではないか」
「医療事故調査に心臓外科医が1人も入らなかったのは常識では考えられない。
・ 3学会合同委員会の検証
⇒女子医大に照会すると「検証のデータはない」
・ 訴因変更
⇒検察、ポンプ回転数上昇に関して主張を取り下げる。
・ 「科学的ではなかった」
内部調査報告書 責任者 東間紘先生のコメント
「報告書の結論に根拠はない。」
「『科学的ではない』と言われれば、その通りだ。いま思えば、外部の心臓外科医を調査委員会にいれておけばよかったかもしれない。」
関連書類
3学会合同陰圧吸引補助脱血体外循環検討委員会報告書
日本胸部外科学会、日本心臓外科学会、日本人工臓器学会
平成15年5月
www.jsao.org/tools/file/download.cgi/69/vavd_report.pdf
日経メディカル2008年7月号による事件裁判の概要
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/files/200807.pdf
東京女子医大事件の時系列
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_a866....
公開質問状
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/cat6216890/index.html
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