心臓血管外科専門医認定機構医療安全講習会
「女子医大の経験」-再発を防ぐために-
第37回 日本心臓血管外科学会学術総会
心臓血管外科専門医認定機構医療安全講習会
「女子医大の経験」-再発を防ぐために-
講師:黒澤博身 東京女子医科大学心臓血管外科主任教授
座長:川島康生 国立循環器病センター元総長
2007年2月22(木) 14:10 ~ 15:00
ABC会場 京王プラザ 本館5F コンコード
この学会のパンフレット(日程と演題抄録)が配送されてから、この講習会「佐藤が何かをやらかすのではないか。」という噂が流れ、私の周囲でもいろいろありました。学会員として、「公開質問状」を措いて、2つのお話をしました。
1. 悪しき医療報道について
このことは、以前の ブログ「医者」と「記者」 MedicalとMedia-「医療と報道」 カウントダウン4 http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post.html
において、しっかり述べました。
講師が最初に、「女子医大の事件の件はマスコミ報道で、皆さんご存知だと思いますが・・・。」と述べられましたが、これが一番、危険な考え方です。更に、女子医大が主導した、内部調査委員会、すなわち22例(私の事件後、証拠保全、カルテ開示、異議申したて等)に対する調査をした委員会の中には、病院内医師の他に患者両親、家族会代表、新聞記者が入っていました。この二つのことから、私は、発言することを最終的に決めました。
マスコミの医療報道は、特に医療事故報道は、「東京大学医療政策人材養成講座」によれば、「悪しき医療報道」に分類され、特に女子医大事件は「悪しき医療報道」と名指しされていました。「事故ジャーナリスト」普段は、殺人事件や誘拐事件などを報道している警視庁記者クラブ所属の社会部記者によって報道されています。(最近の裁判で分かったある)新聞社などでは、女子医大の内部報告書を数時間読んだ程度の警視庁記者クラブの「事故ジャーナリスト」が書いたことが分かりました。
国民に医療に対する共通認識、国民的合意が必要であるのですから、それを伝えるマスコミは重要なので、我々はそれをどのように活用していくかを考えなくてはならないと思います。
2. 人工心肺中のトラブルに対する対処法の明文化
患者さんに、脳障害が発生したと、プレゼンテーションやその原稿にはありましたが、患者さんに発生したのは、脳低還流ではなく、脳うっ血です。この点に関しては、内部報告書も「上大静脈症候群」という言葉を用いています。すなわち、患者さんの上半身は異常の膨れ上がるほど浮腫が発生していたのに、下半身には全く症状がなく、GPTなどの酵素の上昇もなく、ICUチャートの「肝腫」の欄は(-)がずっと記載されています。
このことは、「脱血不良が発生したときに、」脱血管に空気が入ったので、脱血管が鉗子で閉塞され、「所謂『吸引回し(サクション回し)』をして対処しようとしたのに、下大静脈だけが、パーシャルバイパスになっていて、上大静脈はトータルのままだった。」ことを意味します。
事故後、人工心肺のハードに関するガイドラインや、人工心肺側の操作に関連したマニュアルが次々と作成され、テキストにも書かれています。ところが、術野側の対処、すなわち、「脱血管からの脱血ができなくなったときに、上下大静脈を着実にパーシャルバイパスにして、『吸引回し(サクション回し)』にする」ことは、あまりに当たり前すぎるためかどの教科書にも、マニュアルにも書かれていません。裁判で証拠として提出しようとしましたが、明文化されていないのです。当たり前といえば当たり前の事なので、書かれていませんが、患者さんの命に関わることなのですから、明文化して、記述すべきです。
以上
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